料理の基本「さしすせそ」の意味
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料理の基本に、「さしすせそ」があることをご存知でしょうか。 これは和食の味付けに関する考え方で、料理のどのタイミングでどの調味料を加えればよいか、という順番を示した言葉です。
「さしすせそ」の内訳は一文字ずつ、「さ」が砂糖、「し」が塩、「す」が酢、「せ」が醤油、「そ」が味噌、となっています。 「さ」から「す」までは、それぞれ頭文字を取っているだけなので覚えやすいでしょう。
「せ」は、醤油のことをかつて「せいゆ」、後に「せうゆ」と記すようになったことに由来しています。旧仮名遣いでは、本来「さうゆ」や「しやうゆ」というのが正しい表記です。
しかし、一般的にはこの「せうゆ」が用いられていたこともあり、「さしすせそ」に合わせて「せ」は醤油としています。 また、最後の「そ」だけは頭文字ではなく味噌のお尻の文字から取られています。
やや強引な部分もありますが、ここで重要なのは「さしすせそ」の並びによって順番が示されているという点です。それを、語呂によって覚えやすくしているわけですね。
「さしすせそ」の順番の理由
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では、なぜ料理では「さしすせそ」の順番がよいとされているのでしょうか。 これは、まず味のなかでは甘味がもっとも食材に浸透しにくいからです。
そのため砂糖を最初に入れて、まずはしっかり甘味をつけていくという目的があります。 次に、塩は食材の水分を吸い出す性質があります。それによって煮汁に味がつきやすくなるので、早い段階で加えていきます。
酢は、塩よりもさらに甘味の邪魔する性質があるので、塩より後に加えます。 また、「さしすせそ」の後半となる「す」から「そ」までの調味料は、いずれも料理で風味をつけることが目的となっています。
そのため、熱を加えて香りが飛ばないように、いずれも順番を後回しにしています。 なかでも酸味が飛びやすい酢を最初に、そして香りの飛びやすい醤油、味噌を後から加えていきます。醤油や味噌についてはほとんど加熱せず、火を止めてから溶かすだけでも十な場合もあります。
〈さ〉砂糖の特徴・効果
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砂糖は、料理で甘味を加えるための調味料です。 また、水分をよく吸収することから、タンパク質の凝固温度を下げたり、でんぷんが固まるのを防いだりする性質があります。
それによって食材が柔らかくなり、ほかの調味料をより浸透させやすくする効果も持っています。 このような理由に加え、味が染み込みにくいことから、「さしすせそ」ではもっとも早い順番に置かれています。
では、なぜ砂糖が染み込みにくいのかというと、その理由は分子のサイズにあるといわれています。砂糖は高分子といわれる、多数の分子が集まってできた成分です。
そのため、細かい食材の細胞の隙間までうまく入ることができないのです。 ただし、温度が高いと染み込みやすくなる性質があるので、煮立たせる料理などではこれをうまく利用しています。
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〈し〉塩の特徴・効果
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塩は、料理に塩分を加えるのが目的の調味料です。 単純な塩味だけではなく、例えばスイカやお汁粉にかけるように、少量を加えることで、かえって甘味や旨味を引き立たせる効果も持っています。
このように、塩は料理の味わいを決めるうえでもっとも重要な役割を持っている調味料です。食材の種類や状態、分量、調理のタイミングなどによっても加える量が大きく変わってくるので、とても繊細に扱わなければいけません。
また、塩は浸透圧作用によって食材の水分を吸い出し、引き締める効果も持っています。 「さしすせそ」では、塩より後となっている醤油や味噌にも塩分が含まれているので、その点も考えて使い方を考えましょう。
〈す〉酢の特徴・効果
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酢は酸味を加えると同時に、料理の香りづけにも用いられます。その風味によって、食欲を大きく増やす効果があります。 他にも、食材の臭みやぬめり、アクなどを取って食べやすくしたり、腐りにくくすることで古くから保存食にも用いられてきました。
酢はなかなか食材になじみにくい性質を持っています。しかし、塩が水分を吸い出すことで染み込みやすくなるので、「さしすせそ」でもその順番になっているわけです。
また、ある程度熱で酸味を飛ばすことでまろやかな味わいにもなるので、料理の中盤に入れることがすすめられています。 酸味を強めに加えたい場合には、何度かに分けて使用しましょう。
〈せ〉醤油の特徴・効果
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醤油には塩分だけではなく、原料の大豆や小麦による甘味、苦味、旨味、酸味といったさまざまな味が含まれています。 そのため、出汁の味わいを決めるうえではとても重要な調味料となっています。
発酵食品に特有の、とてもよい香りがあることも特徴です。それによって、肉や魚の臭みも取ってくれます。また、そのツヤのある色合いから、食材の色つけにも用いられます。
加熱するとせっかくの風味が飛んでしまうので、「さしすせそ」では後半に入れることがすすめられています。 醤油は原料の割合や作り方によって、多くの種類に分かれます。
関東で主に用いられる濃口はクセのある食材に、関西でおもに用いられる薄口は素材の味を活かすために、といった使い分けもします。 塩分がとても多く、塩の6分の1ほども含まれているので、それも考えた配分が必要となるでしょう。
〈そ〉味噌の特徴・効果
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味噌は発酵食品特有の、とてもよい香りが特徴の調味料です。 原料の大豆や米による甘みや旨味、そして塩分が一体となったコクのある味わいで、料理に風味をつけて食材の臭みを取ってくれます。
「さしすせそ」のなかでも、もっとも加熱により香りが飛びやすいので、一番最後に入れることになっています。 味噌汁などに用いるさいにも、沸騰させないで90度ぐらいの段階で入れるのがもっとも香りがよくなるとされています。
ただし、味噌にはその原料や作り方によって米味噌や豆味噌といったさまざまな種類があります。なかには八丁味噌のように煮込むことで味わいを増すものもあるので、香りの強さや塩分による使い分けが大切になってきます。