日本には、重要文化財や登録有形文化財などこれから先も工芸品や建造物などの文化財を存続・維持していくために制定されているものがあります。
今回はその中でも「登録有形文化財」についてご紹介していきます。
登録有形文化財とは
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登録有形文化財とは、都市開発などでその土地に残る大切な建設物や美術工芸品などの文化財を守るために制定されてものです。1996年に制定され、多くの建造物が登録有形文化財に指定されています。
この登録有形文化財に指定された建造物は、修理のための設計監理費の補助や減税を受けられたりとメリットがあります。また、外観を著しく大幅に変更しなければ改修や改装も行うことができます。
47都道府県各地域に、これからも残していきたい建造物が多くあります。今は見慣れた景観の一部となっていますが、何十年、何百年と時がたち当時の歴史を物語る大切な文化財となるのです。登録有形文化財はそれらを守るために作られました。
登録有形文化財に指定されている建造物には、社寺や橋、トンネルや煙突、家など様々なものがあります。
登録有形文化財の指定基準
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登録有形文化財に指定されるには建てられてから50年以上経っていなければなりません。また、歴史的な景観や造形が美しく優れており、簡単に再現できないものが選考基準です。文部科学省にある指定基準は以下の通りです。
建築物、土木構造物及びその他の工作物(重要文化財及び文化財保護法第九十八条第二項に規定する指定を地方公共団体が行っているものを除く。)のうち、原則として建設後五十年を経過し、かつ、次の各号の一に該当するもの
一、国土の歴史的景観に寄与しているもの
二、造形の規範となっているもの
三、再現することが容易でないもの
文化財の所有者が自ら申請し、専門家による調査を行って上記にあげた基準のいずれかを満たしていれば登録有形文化財に登録されます。
登録有形文化財と有形文化財の違い
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登録有形文化財と似たような言葉が「有形文化財」です。いったい、何が違うのか?と疑問に思う方も多くいることでしょう。その違いには大きく異なる点がいくつかあります。
まずは、有形文化財は「国宝」に指定されることがありますが登録有形文化財は指定されません。
次に、有形文化財に指定されているものは建造物や絵画、彫刻、書物など多岐に渡り、様々なものがあります。一方で、登録有形文化財は建造物と美術工芸品のみです。登録有形文化財が制定された当初は、建造物のみでしたが2004年に改正されてその他の文化財も対象となりました。
また、有形文化財でも国や地方自治体などに指定されてしまうと、厳しく制限されるため改修や改装などが難しくなり、他にも所有者に様々な制限がかかってしまいます。しかし、登録有形文化財であれば、ある範囲内で所有者の自由がきき、改修や改装が可能となります。
登録有形文化財のメリット・デメリット
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では、登録有形文化財に登録した際のメリットとデメリットを見ていきましょう。
登録有形文化財のメリット
登録有形文化財のメリットは、文化財を活用しながら保存でき、ある範囲内での修繕や改修の自由があるため文化財の活用の幅が広がる点です。
他の指定文化財では、修繕や改修の自由がなく、「釘一本自由に打てない」と言われるほど所有者にあらゆる制限がかかります。その一方で登録有形文化財ならば、機能の追加や改修が行えるので、地域復興などにも活躍しています。
また、登録有形文化財に登録されたものは、様々な優遇措置が受けられます。例えば、文化財の保存・維持と活用のために必要な修理費などを国による補助が半分出たり、相続税や固定資産税が減免されたりします。
登録有形文化財のデメリット
一見、上記に挙げたメリットのみを見ると登録有形文化財はとても良いものに見えますが、いくつかのデメリットも存在します。
まず、所有者の判断で自由に登録を抹消することはできません。反対に、改修や修繕によって文化財の価値が損なわれたと文化庁が判断した場合、登録有形文化財から登録抹消されてしまいます。
また、上記に挙げた登録有形文化財に登録した際の優遇措置ですが、文化財の修理や修繕を行う際に”設計監理”と呼ばれる図面を描き、図面通りに設計が進んでいるかチェックする人が必要となります。その設計監理ができるのは特定の技術者、建築士のみです。
ですので、その技術者を探すのに時間も費用もかかります。また、技術者を見つけたとしてもそこから半年~1年ほど審議が必要となるため、優遇措置を受けることは多額の費用がなければ難しいです。