最中と最中の歴史
和菓子の中でも安定した人気を誇る最中。もちろん、読み方はさいちゅうではなくもなかです。今なお各地で新しい商品が作られ続ける最中の秘密と、歴史を見ていきましょう。
最中の定義ですが、餡を包んだお菓子のうち、皮が餅から作られているものを言います。そもそも最中とは、この皮でできたお菓子を指していました。餅米でできた皮だけのお菓子は江戸の吉原で誕生し、「最中の月」という洒落た名前がついていました。
次に、この最中の月というお菓子で、餡を挟んで売り出した菓子店が、日本橋界隈にありました。当時の名称は最中饅頭です。最中の月で餡を挟んだ饅頭ですから、当然といえば当然のことでしょう。これが現在の最中へと発展してきました。
このように、非常にポピュラーなお菓子である最中は、職人の創意工夫の結果として生み出されたものだということが窺えます。現在では、お詫び用に人気の「切腹最中」などという最中も売り出されています。
最中の語源
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現在の最中の名称は、「最中の月」、そして最中饅頭から来ています。最中の月とは満月を指す言葉で、確かに新月と新月との間、最中にあるのが満月です。最中という字に色々な読み方が存在するのは、たまたまではないことがわかります。
さて、この最中の月というお菓子の名前がどこから来たかですが、由来は古く、平安まで遡ります。平安時代の三十六歌仙に数えられる歌人、源順(みなもとのしたごう)が詠んだ一首、「水の面に照る月なみをかぞふれば今宵ぞ秋の最中なりける」から名前を取って、お菓子の「最中の月」が生まれたのです。
なんとも深い教養に溢れたネーミングではないでしょうか。名前から月が落ちたのは、当初円形だった最中が、徐々に形を変えていったこともあるようです。
最中の皮の原料と作り方
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薄い、パリパリした皮があってこその最中です。皮あってこそ、アイスを包んだお菓子をアイス最中というのでしょう。最中の皮は、餅米の粉を練って蒸し、薄く延ばしたものですが、どのように作るのでしょうか。まず、餅米と水とを蒸して、搗いてお餅を作ります。
この搗きあがったお餅に、馬鈴薯でんぷんを振って薄く延ばします。細かく切って、型に入れ、焼くとできあがりです。皮は餡を挟むものですから、立体になっていなければなりません。皮を着色したり、別の材料を加えたりすることで、カラフルでバラエティに富んだ皮を作ることができます。
アイス最中の皮の場合、乳分、油分を加えるという違いがあります。なお最中の皮は、割と簡単にご家庭でも作ることができます。ご家庭の場合、餅米ではなく、白玉粉とコーンスターチを使うと綺麗にできます。
最中といえばたねや
滋賀県の近江八幡市に本社のある、「たねや」は最中の老舗です。首都圏、京阪神の百貨店にもお店が多数ある、人気ナンバーワンの最中です。たねやの代表商品は、そのままの名称「たねや最中」です。たねや最中は、皮と餡とがべつべつに包装されていて、食べる人自らが、皮で餡を挟みます。
この工夫により、いつでも作りたての味が楽しめるのです。通常の最中は、餡に水分が多過ぎると皮が湿気てしまいますので、通常よりも多めに砂糖を加え、そのため甘くなってしまう欠点があります。
食べる直前に挟むたねや方式ですと、この問題はありません。さらにふくみ天平(てんぴん)はたねや最中の上級版で、こちらの餡には、求肥が入っています。たねやの最中は、地元滋賀県産のお米と、北海道産の小豆で作られています。
職人の創意工夫が見える最中
ありふれたお菓子のようですが、上質なものですと贈答にもぴったり、そんな最中について見てきました。
名前から洒落た由来を持ち、現在も次々新商品が出る、職人の創意工夫がよく表れるお菓子です。そんな背景にも着目してみて下さい。また、その背景や歴史を知った上で最中を味わってみてはいかがでしょうか。