日常を離れて聖地を巡る旅を巡礼といいますが、古くより人をときめかせるもののようです。古今東西、様々な宗教において聖地巡礼がおこなわれており、エルサレムやメッカ、ブッダガヤは有名です。日本でも、古くから巡礼は盛んにおこなわれました。
日本の巡礼は仏教および民間信仰に基づくものですが、西国三十三所、熊野詣、お伊勢参り、富士講など、全国各地に見られます。日本の巡礼の中でも、弘法大師空海の足跡を辿る四国八十八箇所参りは、巡礼先である札所が四国全域にまたがるため、規模が非常に大きいものです。
「お遍路」という別称がついているのは、ここ四国の巡礼だけです。お遍路は、もちろん宗教的儀式でもありますが、同時に世俗化された旅の楽しみもあります。かつてはもちろん、徒歩で札所を巡る「歩き遍路」が主であったわけですが、現代では、札所をバスで巡るツアーなども盛んです。
そしてお遍路の人気は、その懐の広さにもあります。目的も人それぞれですし、札所巡りの順序も設定されてはいますが、巡り方も自由です。そして、服装も自由ですが、あえて巡礼装束に身を包む人が多いです。
四国のお遍路の歴史
出典:写真AC
お遍路の歴史は不明なところが多いものの、弘法大師の出生は讃岐であり、そして四国全土で修行したこともあって、四国は弘法大師信仰において古くから、重要な地位を占めていたことが知られています。いずれにせよ、霊場としての長い歴史があり、江戸時代には現在の四国八十八箇所がほぼ確立したようです。
信仰上は、四国八十八箇所の札所は弘法大師が開創したとされていますが、さすがにこれはフィクションです。全国の巡礼で唯一、お遍路と呼ばれ、別格の扱いを受けているのには理由があって、かつての四国のお遍路は、他所に比べてその真剣度が非常に高かったのです。
病気を抱え、また故郷を追放された疎外感を抱きながらの、祈りの旅もここには多く見られました。交通機関が発達し、バスツアーで気軽に札所を廻れるようになった現代でも、かつての片鱗はなお残っています。
願いを込めて廻る、四国のお遍路
四国のお遍路は、特定の目的を持ってしなければならないものではなく、各人それぞれが願いを込めて廻ればよいのです。健康祈願、開運、縁結びや厄払いなどなんでも構いません。
最近では、四国のパワースポット巡りという人もいますが、それもよいのではないでしょうか。ただしどんな目的でも、弘法大師と一緒に巡るのだということは意識したいものです。
お遍路の巡礼者が被る菅笠には「同行二人」と書かれているのですが、二人とは、巡礼者と弘法大師のことです。弘法大師がいつも見守ってくれているのが四国のお遍路です。
白衣に脚絆、四国のお遍路の伝統スタイル
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四国のお遍路は長旅ですので、動きやすい自由な服装でも、もちろん構いません。しかし、統一したスタイルで廻る人が多いです。白装束に菅笠をかぶり、輪袈裟をまとい手甲脚絆を身に着け、混合杖をついて廻るのが四国のお遍路ならではです。
さらに持鈴をぶら下げ、チリンチリンと音を鳴らすことで、煩悩を払いのけながら廻ります。装束等は、四国のお店も多く簡単に購入できます。