雪舟の水墨画の魅力とは?生い立ちや逸話、作品の特徴は?

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1分で読める要約

雪舟(1420-1506年頃)は、日本を代表する水墨山水画家で、その卓越した才能から「画聖」とも呼ばれました。現在6点の作品が国宝に指定されており、日本美術史上極めて重要な画家として評価されています。

岡山県の武家に生まれた雪舟は、10歳頃から京都の相国寺で禅の修行をしながら、当時の名手である天章周文に絵を学びました。1467年には明に渡り、約2年間滞在して本格的な水墨画を学び、大陸の広大な自然に触れたことが後の作風に大きな影響を与えました。

雪舟の画風の特徴

・力強い筆致と安定感のある構図
・輪郭線の強調
・広大なスケールの空間構成
・繊細な線の使い方

代表作には「秋冬山水図」「四季山水図巻」「破墨山水図」などがあります。その影響は後世の画家たち、特に長谷川等伯や狩野探幽らに強く及びました。

幼少期のエピソードとして、寺で柱に縛られた際に涙で鼠を描いたという逸話が有名です。これは彼の並外れた画才を象徴する物語として今日まで語り継がれています。


日本画に多大なる影響を与え、今もなおその作品は国宝として崇められている、日本を代表する水墨山水画家である「雪舟」(せっしゅう)。 その特出した才能から「画聖」という名前でも呼ばれることのある「雪舟」は、水墨山水画を描きに日本の各地に出向いたと言われています。

また「雪舟」が当時描き、現在に残されている作品においても、他の画家では例の見ない6点もの作品が国宝とされているなど、日本国内で最高級の評価を受けています。 500年以上も前に、数々の名作を世の中に残した「雪舟」の魅力とはいったいどんな所にあるのでしょうか。

雪舟の生い立ち・人物像


出典:Wikimedia Commons

雪舟は1420年に現在の岡山県総社市で産声をあげました。武家の家で育った雪舟は、当時は禅僧が文芸や学問を教えていた事もあり、近くにあった宝福寺という寺院にて修行することとなります。

10歳頃になると雪舟は、京都にある相国寺において、後に五山僧としては最高峰の地位まで登り詰めた「春林周藤」に師事し禅の修行を積むこととなります。それと同時に、画家として足利家の御用を務めていた、室町時代の水墨画の名士「天章周文」に絵を習いました。

雪舟は1454年頃には、現在の山口県山口市で「画室雲谷庵」を構えることとなります。そして、1465年頃になると、今まで「拙宗」としていた名を「雪舟」と名乗るようになりましたただし、この説には確たる証拠が存在せず、二人が描いた画の特徴を比べてみた結果から、同一人物であったと言われています。

そして1467年に雪舟の作画を決定づける出来事がありました。それは遣明船で明に渡り、約2年間もの間、明で本格的な水墨画を学び、大陸の広大な景色を感じたことです。

日本の仏教とも関係が深いとされる天童山景徳禅寺で、雪舟は「四明天童山第一座」という位を授かることとなります。

島国の日本とは違い、広大な景色と自然をもつ大陸の姿は、後の雪舟の作風に大きな影響を与えることとなります。それを示すかのように雪舟はこの頃に、風景こそが最大の師だと悟ったと言われています。

風景画に魅入られた雪舟は、中国各地の風景を写生します。なお、この風景画は今でも中国各地に残っています。 1469年に中国から多くを学び日本に戻った雪舟は、精力的な創作活動を行うこととなり、数多くの名画を描きあげることとなるわけです。

雪舟の没年については確かな記録などが残されていません。しかし現在考えられている中で比較的有力なものとして、87歳となる1506年に没したとされる説が多く言われています。また、命日についても8月8日や9月16日など諸説があります。


出典:写真AC

雪舟の才能を表す有名な話があります。雪舟は幼い頃、宝福寺で禅や絵などを修行し学んでいましたが、あまり禅の修行には身を入れず絵をよく描いていました。それを良しとしない住職が、雪舟を本堂の柱に縛り付けます。 夕方になり住職が柱に縛られた雪舟を見に行くと、雪舟の足元に大きな鼠がいることに気が付きました。

住職はその鼠をどこかに退かそうとしますが、鼠が動く様子はありません。それもそのはずです、なんとその鼠は、雪舟が足の親指に床に流れ落ちた涙を使って描いた鼠だったのです。それを目にした住職は痛く感心してしまい、それ以降は雪舟が絵を描くことに理解を示したと言います。

雪舟の画風・特徴

雪舟の画風は、力強い筆のようすや安定感のある構図にあります。これは、中国で水墨画を学んできた影響を独自の作風へ昇華した、雪舟独特の作風となります。

また、輪郭の線が強調されていたり、広大なスケールで描かれる空間構成、細い線の使い方だったり、雪舟の描く水墨山水画の特徴とも言えます。

雪舟の代表作

雪舟の作品のうち、「秋冬山水図」「四季山水図巻(山水長巻)」「破墨山水図」「慧可断臂図」「天橋立図」「山水図」の6点が現在、国宝に指定されています。 特に「秋冬山水図」は有名で、切手としても扱われた作品となります。

雪舟の禅画の特徴


出典:Wikimedia Commons

水墨画と禅は密接な関係をもっており、雪舟の作品においてもその様子を伺うことができます。 禅画の代表作として有名な雪舟が描いた「慧可断臂図(えかだんぴず)」では、作画に登場する2人の心情や緊張感を「眼」で表現しています。スケールの大きな絵画を特徴とする雪舟において、その繊細さを垣間見ることができます。

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雪舟は、当時の明の著名な画家よりも、宋や元の時代に活躍した画家の「夏珪」や「李唐」らの影響を色濃く受けています。実際に雪舟はその頃の画家の作品を模写して勉強していました。

雪舟が与えた画家

また、雪舟に影響を受けたとされる画家は数多く存在しています。 代表的な画家としては、安土桃山時代を代表する画家である「長谷川等伯」や、徳川家康に認められた才能をもつ江戸時代に活躍した「狩野探幽」などがいます。

多くの人に愛される雪舟


出典:Wikimedia Commons

今もなお多くの人々を虜にして止まない雪舟。その人気は才能あふれる水墨画だけではなく、描くことに打ち込んできたその生き方にもあります。

禅僧として生涯を貫いた雪舟の水墨画から感じ取れる禅の精神は、現在を生きる私達にも色々なことを感じさせてくれることでしょう。

雪舟と言う人物についてもっと詳しく知りたいという方には、こちらの本がおすすめです。

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