出典:ウィキメディア・コモンズ
葛布とは
上記の写真中の襖(ふすま)は、葛布で作られています。葛布(くずふ)とは山や野などの自然に自生する葛(くず)という直物の繊維を織り上げた布のことをいいます。葛布は絹や麻では出せない優雅さや優しい落ち着いた渋みのある光沢を兼ね備えています。葛布は和物だけでなく洋物にも愛用されています。
江戸時代では参勤交代の諸大名の御土産として扱われたり、明治時代には襖地として使用され、アメリカでは最高級の壁紙として親しまれています。まさに、葛布は世界中で愛される布の一つといえるでしょう。
葛布の歴史
出典:大井川葛布
次に葛布の歴史と、生産地などをご紹介します。
葛布とは葛の繊維を紡いだ糸から作られた織物であり、元は中国の江蘇省呉県草鞋山(そうあいざん)遺跡から発見されたのを起源とし、日本古来では庶民の衣類や上流階級の喪服など主に衣服に使われていました。
しかし現代では衣類に使用されることはほとんどなく、その多くは襖張り(ふすまばり)や壁張り、表装や装本用の布などで使用されています。
また葛布は日本三大古代布一つにも数えられるほど古くから作られており、そのことからも日本の伝統工芸として貴重であると言えます。
生産地としては大井川葛布が有名で、静岡県中部、島田市にその工房があり、いまも伝統的な製法がなされています。
葛布の特徴
出典:大井川葛布
葛布の特徴はその光沢にあり、光沢は繊維の平面に光が当たり、反射によって生まれます。
素の自然のまま織り込まれる繊維でありながら、製法ゆえに出現する不思議な光沢が葛布の最大の特徴であり、古くから上流階級に親しまれてきた理由にもなっていると考えられます。