葛布の作り方
①生蔓(なまつる)の採取
出典:大井川葛布
葛布は6月から8月にかけ、その年新しくのびた蔓で、2〜3mくらいになったものの根本に鎌を入れて生蔓を採るところから始まります。
②生葛(なまつる)を煮る
出典:大井川葛布
次にここでポイントとなるのが、生葛を採取してから煮るまではあまり時間をおかないことです。仮にすぐ煮ることができない場合は、葛束を水に漬けておくのが基本で、これは日光と乾燥を防ぐためでもあります。
葛束を20分くらい煮れば、次に黄色に変色し出すので、そうすれば釜からあげすぐに水につけます。
③室に寝かせて発酵
出典:大井川葛布
ススキなど色素の出にくい草を河原に敷き、その上に葛束を並べ、その上をススキの葉などで覆い、さらにマコモや藁(わら)で作った筵(むしろ)である菰(こも)をかぶせて石で重しをします。
4〜5日後に葛の表面がぬるぬるして容易にはがれることを手で確かめて、室から起こすと発行の完了です。
④葛を洗う
出典:大井川葛布
川の流れを利用して、発酵した葛の表皮を洗い落とし、その後丁寧に苧洗い(おあらい)します。この時きれいになった部分から手がなにし、靱皮が幾条にも割れないように注意する必要があります。
⑤葛つぐり
出典:大井川葛布
葛苧(つるお)を少し裂いて元と先の部分同士を機結びでつなぎ、結んだ糸は、桶や新聞紙などを使いそのうえに輪をかくように重ねます。
製織
出典:大井川葛布
出来上がった糸を機械を使って用途に合わせて平織で織っていき、織り終わったら機械からはずし、「しけとり」というひげを取る作業を行い、その後、砧打ち(きぬたうち)を施し練りと照りを出して完成です。
葛布の屏風
出典:ウィキメディア・コモンズ
葛布の特徴は不思議な光沢だけでなく丈夫で水に強いこともあり、その特性から雨具や袴(はかま)、ふすまや屏風などにも使用されています。
安土桃山時代~江戸時代まで活躍した芸術絵師である俵屋宗達(たわらやそうたつ)作の「風神雷神」が描かれた屏風など、歴史的文化財にも葛布が使われており、上流階級だけでなく名のある芸術家にも葛布は愛されていたことがうかがえます。
葛布の魅力
出典:写真AC
日本の伝統工芸であり、文化財にも使われている日本の葛布は、現代でも雨具や袴、ふすまや屏風だけでなく、高級感あるタオルやハンカチなどにも使われることがあり、愛されています。
生産過程も実に手間暇をかけ、丁寧に作られており、日本の技術と文化、さらに真心を表した伝統工芸であると言えます。
観光などで屏風などの歴史文化財を鑑賞することがあれば、ぜひここでご紹介した葛布の情報を思い出して下さい。
その文化財の材料となった葛布の製法や歴史を思い出せば、さらに深く味わうことができます。
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