茅葺き屋根とは
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茅葺き屋根とは、茅を材料として葺く(ふく)家屋の屋根のことをいい、茅葺き屋根もしくは茅葺屋根といいます。
ただし、茅という植物はなく、主にススキやヨシ、カリヤス、カルカヤ、シマガヤ、チガヤといったイネ科の多年草を屋根材の総称として、茅と呼びます。そして、茅を採集するために確保された場所を茅場といいました。
主な材料であるススキは、かつて日本全国のいたるところに群生していて、草刈りや火入れ、放牧などが続けられていれば、毎年再生産が可能なので、屋根材としては最適なものでしたが、高度成長期以降の都市化の進展にともなって、現在ではススキの群生地は限られたものになってしまっています。
茅葺き屋根の歴史
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茅葺き屋根の歴史は古く、その起源は人間の生活形態が定住になった縄文時代といわれています。この時代の竪穴式(たてあなしき)住居には、打石器によって茅を刈ったり木を切ったりして築かれた茅葺き屋根が用いられました。
また、茅葺き屋根は日本全国において住宅のみならず寺社やあらゆる建物に用いられてきました。
やがて時代が進むと朝鮮半島から仏教とともに瓦屋根(かわらやね)が伝来し、寺院の屋根は瓦に変わり、やがて一般の住宅でも瓦屋根が用いられるものの、その後の武家社会では一般農家で瓦屋根を葺くことが禁止されていたため、明治に解禁されるまでは主に茅葺き屋根が用いられました。
茅葺き屋根の特徴とメリット
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茅葺き屋根の特徴としてはまず、屋根の角度が急勾配であるということがあります。
これは雨水が屋根に溜まってしまうことによって起こる雨漏りを防ぐためで、茅の種類によっては茎などが太く隙間ができやすくなるため、さらに勾配が急な屋根が造られていました。
また、茅葺き屋根のメリットとしては、通気性や吸音性、保温性に優れていて、断熱性も高いということがいえます。
このほか、かつて日本の農村では茅の材料となるススキやヨシが手に入りやすく、近隣住民が一体となり、共同作業によって茅葺き屋根の吹き替えや補修が可能だったこともメリットとして挙げられます。
そして、豪雪地帯などでは屋根の勾配が急なために茅葺き屋根だと雪が積もりにくいという利点もありました。
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茅葺き屋根の作り方
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茅葺き屋根の分布には地域によって特徴があり、岐阜以東ではアシ、ススキ、チガヤといった茅が多いのに対して、近畿以西では麦藁を葺いた住宅が主流になります。
同じように、地域によって屋根の形にも違いがあり、主なものは寄棟造り(よせむねづくり)、切妻造り(きりづまづくり)、入母屋造り(いりもやづくり)などさまざまな形状があります。
そして、茅葺き屋根を葺く作業は、北日本では降雪がはじまる直前の10月~11月、関東以西の太平洋側で11月~12月に行われます。
茅の葺き方は、まず丸太で小屋組をし、竹で屋中(やなか)と呼ばれる横木を取り付けます。かつてはこれらの取り付けは縄ののみで行われていましたが、現在では針金も用いられます。
小屋組ができると、次に茅を葺きますが、これは瓦と同じように軒先から葺きはじめ、軒付けという作業を行い、茅を押鉾(オシホコ)という竹で隙間なく締め付けて並べます。
軒付けののち、茅を並べて竹で押さえ縄で締める平葺きをします。この時長さの異なる茅を4層にして重ねますが、これを1鉾といいます。1鉾茅を葺くとそこへアルキボウと呼ばれる足場を取り付けて1段上に上がり同じ作業を繰り返します。
屋根の頂上まで茅を葺いたら、水が入らないように杉皮で蓋をして竹や縄などで入念に締め付け、茅葺き屋根が完成します。
これらの作業は屋根葺き職人が行っていましたが、1784年の天明の飢饉のころからは、田植えや稲刈りが済むと、百姓が出稼ぎで全国を回ったといわれています。