ぶどうはとても歴史の古い果物で、エジプトではすでに紀元前4000年頃から栽培の様子が壁画などに描かれています。 日本にも早くから伝わり、鎌倉時代のころには甲州ぶどうが栽培されていました。 20世紀には世界でもっとも多く栽培された果物でもあり、果肉は食用以外にも、その7割以上がワインの原料として親しまれています。
現在出回っているぶどうの品種は、そのほとんどが中近東を原産地とするヨーロッパブドウと、北米を原産とするアメリカぶどうとをかけ合わせたものです。その数は、実に1万種類以上にのぼります。そのうちの50種類ほどが日本で商品用に栽培されています。
最近では、より食べやすい種無しぶどうも多く作られるようになりました。 ぶどうが市場に出回るのは、6月から10月にかけて。食べごろは品種によって異なりますが、だいたい8月頃からが旬となります。
日本国内では山梨県でもっとも多く収穫され、1県だけで全体の4分の1近くを占めています。次いで、長野県と山形県がそれぞれ10%以上です。この3県を合わせると、実に国内生産量の半分近くとなる計算です。
ぶどうの色による違い
出典:写真AC
ぶどうはその皮の色によって、赤ぶどう、黒ぶどう、緑ぶどう、の3つに大きく分けられています。 基本的に、ぶどうはまだ熟していないときにはすべて緑色の皮です。それが成長するとともにアントシアニンという色素が作られ、少しずつ黒味を帯びていきます。
このアントシアニンが多くなればなるほど、より濃い色のぶどうとなります。 アントシアニンには5種類あり、それぞれ少しずつ色合いも異なっています。
なかでも、シアニジンが多いと赤ぶどうに、マルビジンが多いと黒ぶどうになります。 緑ぶどうについてはアントシアニンがいっさい作られないため、熟してもそのまま緑色となっているわけです。
種なしぶどうの作り方
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種無しぶどうの多くは、人為的に種ができないように栽培されています。 ぶどうの果実は、本来は種子を包み込む子房がふくらんだものです。この子房は、通常ならめしべが受粉することで種がつき、大きく育っていきます。
しかし、花が満開になる前にジベレリンという農薬に浸すことで、受粉しないまま子房を成長させることができます。つまり、種子のない果肉だけの種無しぶどうが生るわけです。
ジベレリンで成長させた子房はそのままでは大きく育たないため、満開になったあともう一度ジベレリンにひたして成長をうながします。 もともと種のある巨峰やピオーネ、デラウェアなどの種無しぶどうは、すべてこのように作られています。 一方、海外にはもともと種をつけないタイプの種無しぶどうもあります。
いずれも、トンプソン・シードレス やフレーム・シードレス、ヒムロット・シードレスといったように、ひと目で種無しぶどうと分かる「シードレス」という名がついています。
ジベレリンとは
種無しぶどうを作るために用いるジベレリンは、植物ホルモンを原料としています。 植物ホルモンというのは、発芽から開花、果実をつけるまで植物が成長するために必要な物質です。そのため植物自身が分泌を行うもので、いわゆる化学的な肥料などとはまったく違います。
じつは、このジベレリンは日本人によって発見されました。 農業技師の黒沢英一は、稲がひょろひょろと長く伸びる「馬鹿苗病」に着目。1926年には、その原因菌であるカビの生み出す物質が、ほかの植物の成長をもうながすことを発見しました。
その後も日本人によって研究が続けられ、やがてジベレリンは植物自体が分泌する植物ホルモンであることが突き止められます。 現在では100種類以上ものジベレリンが見つかっています。
そして、そのうちのひとつが種無しぶどうを育てるための、受粉せずに果実を育てる作用のあるジベレリンなのです。 種無しぶどうと同じような現象は、野生のみかんやパイナップルなどでも見ることができます。
農薬のジベレリンは菌による発酵で作られ、小袋入りの果粒とし店舗などで販売されています。誰でも手に入れられるので、家庭菜園でも種無しぶどうを簡単に作ることができます。