トマトは果物?それとも野菜?
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トマトは野菜なのか果物なのか。これは、昔からよく議論になってきた疑問の1つです。 例えばアメリカでは、1893年に関税を巡ってこの問題が裁判にまで持ち込まれる事態となりました。新しく導入された制度では、野菜に10%の関税がかけられるのに対し、果物は無税だったからです。
実は、日本でも野菜と果物の定義ははっきりとしていません。 植物学的に見れば、一年生の草本類が野菜で、多年生の木本類が果物という分類になります。つまり、草の葉や茎、根などを食べるものが野菜で、木に生る果実を食べるものは果物ということです。
実際に、果物にもフルーツにも、その言葉には「果実」という意味があります。その点からいえば、果実であるトマトは果物というのが正解でしょう。
しかし、一方で農林水産省では、生産や流通などによってその定義は様々に異なるとしています。基本的には、草本類で生のまま副食として利用するものは野菜なので、トマトも野菜として扱われる場面が多くなります。
一般的にも、料理に用いることの多いトマトは野菜として捉えられていることが多いようです。最初に紹介したアメリカの裁判でも、その生活に根ざした感覚を根拠に、トマトは野菜であるという判決が最高裁で下されています。
フルーツトマトは果物なのか?
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では、名前に「フルーツ」とついているフルーツトマトは果物なのでしょうか。 まず、そもそもフルーツトマト自体がトマトかどうかという点ですが、これはトマトの一種であることに間違いはありません。
では何が違うのかというと、フルーツトマトの最大の特徴はその糖度にあります。
通常のトマトが8〜10度程度であるのに対し、フルーツトマトは9〜12度。その数値は、メロン以上です。品種の違いではなく、育成のさいに水分や塩分を調節することで、このようなトマトを栽培することができるようになります。
つまり、フルーツという名前はその甘さに由来しているわけです。 あくまでトマトであることに変わりはありませんが、果物の定義に「甘いもの」という条件がつくのであれば、果物と見なすこともできるでしょう。
フルーツトマトの糖度はまるで果物!
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近年、流行しているフルーツトマトですが、フルーツトマトは、通常のトマトより糖度が高いトマトです。このフルーツトマトは、果物よりも甘い場合があり、本当に野菜といえるのでしょうか。
フルーツトマトは、糖度が9-12度のこともあります。
みかん 10-14度
マスカット 10-20度
マンゴー 10-14度
このように、フルーツトマトの糖度は、果物と並べても変わりないと言えます。おやつ感覚でフルーツトマトは食べるのに適しているといえます。トマトの中でも、糖度を何倍にもしたフルーツトマトは、実質果物と言っても過言ではありません。
トマトもメロンやスイカの仲間?
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アメリカや日本はトマトを野菜と見ており、フランスや台湾、植物学での定義や農林水産省ではトマトを果物として見ています。
各国の国民性や植物学による定義など、さまざまな見方ができます。日本においては、果菜とよばれる、野菜の中でも葉を食べるのではなく、果実の部分を食べる野菜(ex. なす、きゅうり、ピーマン)に使われる表現があります。
ほかには、果実的野菜といった表現も存在し、メロン、スイカ、イチゴがこれにあたります。もしかしたら、将来トマトも果実的野菜になるときがあるかもしれません。
トマトが原因で起こった事件例
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裁判の発端は、1893年のアメリカで輸入野菜に対する関税がかけられました。当時より、アメリカではよく食べられていたトマトを輸入業者している業者は、なんとか関税を避けることができないかと考えました。
そこで、輸入業者が思いついた内容が、トマトを果物として扱うことでした。関税は輸入野菜にはかけられていましたが、輸入果物にはかけられていませんでした。トマトを果物と主張した輸入業者に対して、行政機関は、トマトは野菜であると主張しました。両者の主張が裁判にまで発展したのです。
裁判では、植物学者も巻き込み、裁判官も判断に困りはてました。そして最高裁までトマトが野菜であるか果物であるかの論争は持ち越したのです。最終的に裁判所の判断は、「トマトは野菜である」といった判断でした。
最高裁判所の判断によって、トマトの果物か、野菜かの裁判は収束しました。最高裁判所の判断の理由は、「トマトは、野菜畑で育てられ、加えてデザートとして食べない」といったものでした。
現在でも、トマトは果物なのか、野菜なのか論争は続いていることから、100年以上前から人を悩ませている問題なのです。