江戸前の天ぷらには、ごま油が好んで利用されます。カラっと揚がって独特の風味が付き、おいしいごま油は、天ぷら屋だけではなく、ご家庭の食卓の強い味方でもあります。 誰しもごま油には、健康に良いイメージを持っているのではないでしょうか。
あるいは、正反対の印象を持つ人もいるかもしれません。実際のところはどうなのでしょう。特に気になるのはカロリーではないでしょうか。ごま油のカロリーは、食品の中で比較すると確かに高く、100gあたり921kcal。
この数字は屈指の高さです。では、ごま油とはカロリーが高い食用油なのでしょうか。実はごま油はカロリーが高い油ではありません。
ごま油の原料と栄養について
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ごまは栽培植物のゴマの種ですが、種皮の色によって、白ごま、黒ごま、金ごまに別れます。ごまの産地はアフリカ大陸、インドから中国、そして中南米と、広い地域にまたがっています。ごま油に加工されるのは、ほとんど白ごまです。ごま油は、茶色い色と香ばしい香りが特長ですが、これは白ごまを焙煎した際に得られるものです。
白いごま油も見かけますが、これは白ごまを焙煎せず抽出することで作られたもので、茶色いごま油と当然風味は異なります。ごまの高い栄養価については、広く知られているのではないでしょうか。
他の食品と比較したときに多い栄養素を列挙しますと、ビタミンA、ビタミンB1、B2、ビタミンB6、ビタミンE、葉酸、ナイアシン、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、亜鉛、たんぱく質、食物繊維となります。貧血改善、骨粗鬆症予防に効果があるだけでなく、特筆すべきものは強い抗酸化作用です。
ゴマの成分、「セサミン」は健康食品ですっかりおなじみになりましたが、セサミンは抗酸化物質として働くゴマリグナンの代表的なものです。セサミン等のゴマリグナンは、肝臓機能を強化するので、肝臓がん予防にも働きます。さらに高血圧予防の効果も。ごま油のメリットは、その脂質にもあります。
脂質の80%が、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸で、これはコレステロール抑制に効果があります。悪玉コレステロールを増加させることで最近評判の悪い、トランス脂肪酸はほぼ含まれていません。ただ、健康に良いとされるリノール酸の過剰摂取については注意が必要です。
不飽和脂肪酸にはオメガ3系とオメガ6系とがあり、現代人はオメガ6系を採りすぎているためです。リノール酸もオメガ6系なので、健康に良さそうだからと毎日ごま油を使うのはよくありません。ちなみに魚介類を多く食べると、オメガ3系が増え、バランスが良くなります。
ごま油は他の油とカロリーが同じ!
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健康食品であるごまから抽出され、精製されるごま油ですが、カロリーに関しては高い数字が出ています。このごま油のカロリーを、他の食用油と比較してみましょう。比較対象は、菜種油、サラダ油、それからオリーブオイルです。これらの油のカロリーは、揃って921kcal、つまりごま油と完全に同一です。
これを見てわかる通り、脂質の塊である食用油のカロリーが高いのは当たり前なのです。ですから、ごま油のカロリーが高いというイメージ自体、間違ってはいないものの、声高に言ってもあまり意味がないということです。
ちなみに他の食用油も、カロリーに関してはほぼ同じ数字ですが、動物由来のラードやヘットはこれより若干高く、えごま油や亜麻仁油はこれより若干低くなります。