アイヌ神話とは
北海道から樺太、千島・カムチャッカにかけて生活していたアイヌの人々は文字を持たない民族だったため生活に関する知恵や歴史、各地にまつわるアイヌ神話などは全て口承で伝えられてきました。それをウエケペレやユーカラという名で呼んでいます。
その中で最も雄大でロマンチックな物語がアイヌ神話であり、日本神話と類似する部分も多く各地に様々な神話が残っています。 しかし現在残るアイヌ神話の中には同じ内容であっても地方によって多少異なる部分があったり、千島アイヌの話と北海道アイヌの話では国造りの上で登場する神様(カムイ)が違います。
これはアイヌ神話がユーカラやウエケペレによって長い時間かけて語り継がれてきた事によって変化した部分もあるでしょうし、生活環境の違い、住む地域の違いなども要因の1つとなっているようです。
ちなみに現在両親をアイヌに持つ方もほとんど居なくなり、ユネスコではアイヌ語に関して「極めて深刻」な消滅の危機にあるとし、言語はもちろん文化継承に力を入れています。
アイヌ神話の特徴
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アイヌの人々の世界で語り継がれているアイヌ神話の特徴としては、神=カムイは自然の中に存在し自然の恵みそのものが神様という事が基本となります。
神話を見ていくと日本古来の天孫降臨に値する天地の始まり・カムイの始まりに関しても大地の作られ方から始まり、世界を構築するための様子を細かく語っています。
なお汎神論と呼ばれる宇宙と神、自然と神との関係とも大変似ており、ペケレチュプとクンネチュプ(日と月の神)が天に上り夜と昼を交代交代で照らす役目を負い、シリベシの山(羊蹄山)を始めに作った事は太陽神・月神が登場する太陽信仰、天照大御神と月読命とも被る部分です。
ですから自然の中に沢山の神がいるという内容上、日本の神話に登場する八百万の神々ともアイヌ神話が重なる部分が多いようです。
アイヌ神話のカムイについて
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カムイは日本語でストレートに言うと「神」となります。ただし、霊や自然の中にも存在しているとされこれは日本の神話とも重なりますが、違う点としては人工物にも神は存在するという意識なので、「何らかの力を持ったもの全てがカムイ」という事になります。
そこで、カムイと呼ばれる代表的な物を見ていくとヒグマはキムンカムイが毛皮をまとってやってくる仮の姿、キツツキ(クマゲラ)はチップタッチカップカムイと言って丸木舟を作る方法を教えてくれた神様、タンチョウはサロルンカムイ=葦原に住む神などと呼びます。
また、人に恩恵をもたらすものすべてピリカカムイ(ピリカとは美しいという意味も有)、疫病神はパヨカカムイなど人の手を加えられない存在にも神と使います。
さらに人工物ではアペフチカムイ=囲炉裏の中の神などが代表的ですが、生活する上で欠かせない物(これのおかげで生活できる感謝の意)なため神と呼ばれていたようです。
アイヌ神話におけるフクロウについて
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アイヌの人々の世界でフクロウもまた特別な存在です。アイヌ語ではシマフクロウの事をコタンコロカムイ=村を守る神と呼び、夜になると起きてジッと村を見守り偵察してくれる守り神としてみていたようです。
ですからフクロウが登場するアイヌ神話やユーカラは30以上にも上り、有名なユーカラでは知里幸恵さんのフクロウの神が自ら歌った謡で始まる「銀の滴降る降るまわりに」でしょう。
このユーカラは美しい音と流れるようなアイヌ語が絶賛されアイヌ文化が再び注目されました。ちなみに知里幸恵さんの功績を称え「知里幸恵銀のしずく記念館」が2010年にオープンしました。
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