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ニポポとは
「ニポポ」とは網走(あばしり)に行くとよく見受けられる、こけしのような形をした木彫りの人形になります。「ニポポ」にはアイヌ語で「小さい木の子供」や「人形」という意味があり、魔除けや幸運を呼ぶお守りとして使われていました。また「ニポポ」にお願い事をすると、必ず叶えてくれるとも言われています。
ニポポの歴史
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「ニポポ」は1954年に創出されました。元々アイヌの人々は、子供が産まれた際に、「健やかに育ちますように」とお守りとして木の枝を子供の着物などにつけておりました。その木の枝のお守りをルーツとして、「ニポポ」というお守りを作ろうという原案になったと言われています。
そして「ニポポ」の形やデザインは、樺太・ウィルタ族、またはニブヒ族の木彫り神である「セワポロロ」に似ており、その「セワポロロ」を原型として「ニポポ」は作られました。
そして「ニポポ」が創られてから、狩漁で山や海に向かう際には、「ニポポ」にお祈りをしてから出かけるようになりました。また獲って来たもの食べる前に、先に「ニポポ」の口元に与え、感謝をしていました。
特別な願い事が叶った際には、感謝を込めて「ニポポ」の首にショールなどの装身具で飾りつけを行います。「ニポポ」1954年に創出されてから、お守りだけでなく、街のモニュメントや様々なところに登場し、網走の人々から大切な存在として扱われています。
ニポポと網走刑務所の関係
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なぜ「ニポポ」が網走でよく見られるのでしょうか?実は「ニポポ」は網走刑務所の受刑者の方々が制作を行っています。
「ニポポ」が生まれた当時は網走刑務所の受刑者の仕事が少なく、網走博物館初代館長の考古民俗学研究家である米村喜男衛氏は何か受刑者たちのための仕事はないかと考えていました。
その時地域復興を考えていた、樺太研究家の高山長兵衛氏が「セワポロロ」の存在を知り、米村氏に「ニポポ」制作を提案したのが、「ニポポ」誕生のきっかけとなります。そしてそれからずっと現在に至るまで、「ニポポ」は網走刑務所の受刑者が一体ずつ手作り制作しています。
ニポポの材料
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「ニポポ」には非常に縁起の良い木が材料として使われています。「ニポポ」の材料は、槐(エンジュ)という木になります。槐(エンジュ)は中国北部を原産とする落葉性の高木です。元々は薬木としており、その後は排気ガスなどにも強いということから、街路樹などにも使われるようになりました。
また、槐(エンジュ)には様々な使われ方があり、「延寿」とも書け、長寿や安産のお守りとしても使われたことがあります。そのことから、魔除け・長寿・安産・幸せの木として扱われるようになりました。槐(エンジュ)は仏壇などにも使われることもあり、お守りとして使われる「ニポポ」には非常に適した材料だと言えます。