アイヌ語が由来となった日本語や地名は?|消滅の危機にあるアイヌの言葉

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アイヌ語とはアイヌ民族の言語です。北海道や樺太千島などで昔は広く話されていました。しかし今では日本語あるいはロシア語にとって代わられて、消滅の危機に瀕しています。

中央政府などがなかったため、いわゆる共通語に相当するものがありませんが、初めてアイヌ語を学ぶ人は日高地方あたりのアイヌ語を学ぶことが多いです。

発音も日本語と少し違い、日本語の濁音に当たる発音や日本語にない二重母音などが存在します。

また、音節の最後が子音で終わるようなこともアイヌ語の特徴となっています。

基本的に文字表記はありませんでしたが、現在はカタカナで表記するのが一般的になっております。

子音で終わるような日本語にない発音などは、カタカナの「ク」や「シ」や「ス」などを小さな字で表記することで、音色の違いを反映させるようにしています。文法も複雑な言語です。

アイヌ語の歴史


出典:写真AC

明治時代に入り日本の教育制度が広がってくると、アイヌ民族の同化政策が推し進められました。それによってアイヌ語は日常生活から急速に消えていってしまいました。

アイヌ民族の大人同士の集まりでしかアイヌ語はあまり聞かれなくなり、その子供たちにもアイヌ語を伝えるよりも将来を考えて日本語を身につけさせていこうとするようになったのです。

そのためアイヌ語は「滅びゆく言葉」となりました。ただし、こうした時代の流れの中でもアイヌ語の記録を残し後世に伝え残そうとする人たちもいました。

例えば登別氏の知里幸恵さんは「アイヌ神謡集」という書物を1923年に上梓し、またその祖母の金成マツさんという方はかなり多くのアイヌ語で書かれたノートを残しました。

弟さんはアイヌ語言語学的に研究し解説した書物を残しています。

アイヌ語の知識や言語を後世に伝え残そうと情熱を注ぐ人たちはこのように道内の各地でいらっしゃいました。文字がないと言われていたアイヌ語を、ローマ字やひらがなカタカナなどを用いて書き残す工夫もしたのも彼らでした。

少数民族を大切にする考え方になった現代において、文化人類学などで、このような人たちの取り組みが注目され、各地でアイヌ語を学習する人たちが増えてきているのです。

アイヌ語が語源の地名


出典:写真AC

北海道の市町村名にはかなり多くアイヌ語由来の名称があります。

また東北の北部分にもアイヌ語由来と考えられるような地名がたくさん散見されています。

約8割の北海道の市町村がアイヌ語由来で、例えば稚内など「ない」という言葉が入った地名がかなりたくさんありますが、これはアイヌ語の「沢」を意味する言葉なのです。

また「興部(おこっぺ)市」など「ぺ」がつく地名もありますがこれも「川」を意味するアイヌ語です。さらに「長沼町」どという地名もありますが、これはアイヌ語の地名が「タンネ」とという「長い沼」を意味する地名だったためそれが、「長沼」になりました。

このようなケースで、地名にアイヌ語が由来になっているものもあるのです。ただし、他の日本の地名で由来不明のものを無理やりアイヌ語に結びつけられていることがしばしばありますが、これは俗説である場合がほとんどです。

例えば「富士山」はアイヌ語の「フチ(火)」を意味するところから来ているとか、「能登半島」はアイヌ語での「岬」を意味する「ノト」から来ているなどと言われるものがありますが、これはやや根拠が薄く信用できない説です。

アイヌ語が由来となった日本語


出典:写真AC

地名だけではなく、日本語がアイヌ語由来のもので私たちがよく使っている日本語もあります。

例えば「ラッコ」はアイヌ語そのものですし、「トナカイ」もアイヌ語でトナカイと差す言葉でした。また魚の「ししゃも」もアイヌ語の「シシャム」から来ています。

アイヌという言葉そのものも、アイヌ語では「人間」を意味します。また「コロポックル」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんがこれはアイヌ語で「コロ」が「ふきの葉」を意味し「ポック」が「下」を意味し、「クル」が人を意味し、つまり「伝説の小人」という意味です。

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