伝統工芸品であるべっ甲ですが、名前は知っているけれどいまいちどのようなものなのかはわからない、そんな方もきっと少なくないことでしょう。 べっ甲というものがなんなのか、どのような歴史があるのかを知ることがべっ甲の魅力を知る近道となります。
べっ甲とは
photo by loftwork
まずべっ甲とは、温かい海に生息しているウミガメ「タイマイ」の甲羅を加工した工芸品のことを指します。 タイマイは大西洋や太平洋、インド洋といった赤道付近の海に生息している中型のウミガメで、体重約60kg、甲羅の大きさは70~90cmほどであるといわれています。
このタイマイの甲羅を糸ノコなどで形を整え、数枚のパネルに加工したものを熱や水を加えて張り合わせていったものがべっ甲細工といわれるものになります。 ちなみに英語では「Tortoiseshell」と呼ばれています。
べっ甲の歴史
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べっ甲は元々は中国の技術であり、始皇帝の王冠の一部に使われていたという話があるほどにその歴史は非常に古いものです。日本には今から約1300年ほど前に小野妹子が随より持ち帰ったものが最古であるとされており、今でも奈良正倉院の宝物庫に保管されています。
日本で本格的に普及し始めたのは長崎にてオランダとの貿易が盛んに行われる様になった元禄時代、遊女や大名夫人といった富裕層の装飾品として加工され始めたのを皮切りに、明治時代には外国人向けのお土産品などを作るようになるなど目覚ましい発展を遂げました。
日本で普及し始めた当初は貴族向けの装飾品であるという印象が強かったべっ甲ですが、戦後以降には庶民の手にも渡るようになり、アクセサリーや置物などあらゆるものに加工され親しまれるようになったのです。
しかしその後は原材料であるタイマイがワシントン条約によって輸出入が禁止されてしまい、材料が手に入らない状況が続いています。現在は禁止される前に国内に輸入されていたタイマイの甲羅を利用していますが、それもままならないような状況となっています。
養殖などの研究が盛んに行われていますが、なかなか上手くいかないのが現状です。
べっ甲の加工品
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べっ甲の加工品といえば簪(かんざし)やメガネフレームなどが一般的ですが、最近では指輪やネックレス、ペンダントやイヤリング、そしてピアスなど様々な形に加工されています。
べっ甲細工はタイマイの甲羅を使用しますが、一口に甲羅と言っても背甲、腹甲、爪甲のどこを使うかによって色合いや模様が異なるなど全く異なる顔を見せてくれる魅力があるため、様々なアクセサリーに加工されているのです。
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