「型紙」は着物を美しい模様に染め上げるのに必要不可欠なアイテムです。
なかでも伊勢型紙は歴史も古く、職人の手による精緻な手仕事によって生み出されている逸品になります。今回は、伊勢型紙の魅力を紹介します。
伊勢型紙とは
出典:伊勢とこわかや
伊勢型紙(いせかたがみ)は、三重県鈴鹿市で生産される伝統工芸品です。1000年近い歴史があり、1955年(昭和30年)に、重要無形文化財に指定されています。
伊勢型紙の「型紙」とは、友禅や浴衣など、着物の柄を染めるための型紙のことを指します。明治までは「形紙」と書かれてきましたが、現在は「形紙」「型紙」の両方が使われています。
伊勢型紙はデザインが美しく、着物以外の雑貨や照明、家具などでも使われています。
花や植物など、日本古来の自然モチーフが多いため、穏やかでくつろいだ雰囲気が生まれます。
伊勢型紙の歴史
出典:伊勢とこわかや
伊勢型紙の始まりは、諸説ありはっきりしません。1つの説は、奈良時代の孫七という人物が始めたというもの。白子山観音寺の僧侶が、虫食いで穴があいた葉をヒントに、型紙を思いついたという伝説もあります。
三重県は本来、伊勢型紙の原料である和紙や柿渋の産地ではありません。そのため、地域の外部から持ちこまれた技術という説もあります。応仁の乱に追われて、京都から逃げてきた形彫り職人が、三重県に技術を伝えという説が、外部説の典型です。
伊勢型紙は、江戸時代に全国規模の発展をとげました。紀州藩の武士の裃の染めとして、伊勢型紙の小紋が好まれたためです。紀州藩の保護をうけた型売り職人たちは、株仲間を組織し、日本全国に伊勢型紙を売り歩くようになりました。
明治時代になると洋装の普及などで、江戸時代から続いた株仲間が解散します。戦争の影響で職人が減った時代もありましたが、戦後の復興と共に、着物文化も復活。重要無形文化財に指定されるなど、現在の発展につながっています。