伊勢型紙の特徴
伊勢型紙の特徴は、多くの種類の小刀や彫刻刀を使い分けて、美濃和紙の上に多彩な柄を表現することです。柄の彫り方は、縞彫り、突彫り、錐彫り、道具彫りの4つに分けられます。
・伊勢型紙~縞彫り~
糸を使った「糸入れ」で補強した型地紙と、定規と彫刻刃を使って、まっすぐな縞を彫ります。1本の線を3回くり返し彫って、シャープな線を作ります。
・伊勢型紙~突彫り~
紗を使った「紗張り」で補強した型地紙と、刃先が約2mmの小刃を使って、垂直に突くように彫ります。繊細でブレのない、鋭利な柄を作ることができます。
・伊勢型紙~錐彫り~
半円形の刃先がついた彫刻刀を、型地紙に立てて回転させると、丸い穴が空きます。その穴を応用して、鮫小紋、アラレなど、円が並んだ柄を作ります。
・伊勢型紙~道具彫り~
刃先が桜・菊・扇など、小さな型のようになっている彫刻刃を使います。刃先の形が良いかどうかが、柄の仕上がりを左右します。江戸小紋で好まれる技法で、「ごっとり」とも言われます。
伊勢型紙の作り方
伊勢型紙の作り方は、「法造り(ほづくり)」といって、200~500枚の美濃和紙を重ね、同じ寸法に裁断することから始まります。次に「紙つけ」裁断した美濃和紙を3枚、繊維の向きを90度変えながら、柿渋で張り合わせます。繊維が縦横に重なるので、より頑丈な紙を作ることができます。
紙つけの終わった紙は、桧板に広げて、天日乾燥します。紙つけの次に、「室干し(むろがらし)」を行います。乾燥を終えた紙を、燻煙室で約1週間いぶす作業です。通常の紙は、縦横に伸びるため、彫った形がゆがみやすくなります。
「室干し(むろがらし)」を行うと、紙は茶色くなりますが、伸縮性が減り、柄の型崩れが起こりません。「室干し(むろがらし)」を終えた型地紙は柿渋に浸し、乾燥と室干しをもう一度行って完成します。
次のページでは、伊勢型紙職人の道具を紹介します。
伊勢型紙の職人の道具
出典:Wikimedia Commons
伊勢型紙の職人は、「小刀」と「道具」を使って型紙を彫っていきます。小刀はカッターナイフのように、刃先を使って形をつくるものです。小刀型紙職人のもっとも基本となる道具です。
道具は、刃先が桜や菊など文様の形になっていて、紙に押し当てると型抜きができます。文様をきれいに正確に仕上げるには、小刀を自由自在に操れるとうまくいきます。職人それぞれが、自分が使いやすい刃先になるよう、研ぎを工夫します。
また、小刀を研ぐ時は、3種類の砥石を使って、3段階行います。
最初は水砥、1000番の粗目の砥石です。小刀の先端のだいたいの形を作ります。次に1000番より目の細かい水砥を使って、より精細になめらかな表面を作っていきます。
最後に空砥で、細かく仕上げてこの3つの砥石を使いわけることで、伊勢型紙用の小刀ができます。
道具伊勢型紙では、「道具」と呼ばれる彫刻刀も使います。道具の先端には、花や植物、三角、四角など、大小さまざまな形を抜くことができる刃先がついています。
型の種類が多いうえに、大小のサイズ違いを揃えてあるため、1人の職人が数千本の彫刻刀を使い分けています。同じ形を均一に無数に彫ることができますが、彫る時の手加減が違うと、形が違ってきます。一律の力加減で、安定した彫りつづけることが必要になります。