吉祥文様の種類8選|様々な願い思いが込められた文様の数々

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吉祥文様とは?


出典:写真AC

 日本では古くから、着物や工芸品に様々な文様があしらわれてきました。吉祥文様は、その中でもとりわけ縁起が良いものとされています。 文様ははじめ大陸から伝わってきたため、その図案も龍や鳳凰、松竹梅、四君子といった中国の文化を色濃く残していました。

しかし、平安時代になると遣唐使が廃止され、それにつれて、橘(たちばな)や藤、扇(おうぎ)、熨斗(のし)などの日本らしい図案が、貴族の間で有職文様として定着します。

やがて鎌倉時代になると武家に、江戸時代になると庶民にも多く用いられるようになり、様々な図柄が発案されていきました。 その中で吉祥文様は、繁栄や長寿を表すものとして、様々なお祝い事の品物や日用品に広まっていったのです。

吉祥文様の種類①「麻の葉文様」


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正六角形の内側に、6つの菱形(ひしがた)が放射状に広がる幾何学的な模様です。見た目が麻の葉に似ていることから名づけられました。 麻は成長が早く、繊維が通気性に優れ、江戸時代以前は衣類として最も広く使用されていた素材です。他にも食用にできるなど、人々の生活にはとても密着した植物でした。

神事では、お祓いに用いられる大幣(おおぬさ)にも用いられています。 その影響もあり、麻の葉文様は魔除けの吉祥文様として、平安時代には仏像の装飾に、鎌倉時代から室町時代にかけては繍仏に多く見られるようになります。

さらに江戸時代には、歌舞伎役者の岩井半四郎が八百屋お七役、嵐璃寛がお染役で麻の葉文様をあしらった衣装を着用していました。以来、町娘役には定番の文様となって、若い女性たちの間でも大流行しました。

また、麻は虫もつかず強くまっすぐ育つことから、赤ん坊の成長を願って産着にも多く用いられました。 現在でも、着物や帯、襦袢をはじめ、工芸品や建具にまで広く見られる吉祥文様です。

吉祥文様の種類②「紗綾形」


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「卍」を菱形にゆがめ、文字同士を迷路のように繋いだものが吉祥文様です。万字繋ぎ一種で、「菱万字」ともいいます。 インドでは卍の形は太陽をあらわしたものともいわれ、古くからヒンドゥー教や仏教で用いられてきました。 日本では名物裂に多くあることから、明の頃に伝わったと考えられています。

安土桃山時代には、染織品として広く用いられるようになりました。 卍の字がどこまでも途切れずつながっていることから、家の繁栄や長寿を願う不断長久の吉祥文様として扱われています。 紗綾というのは、江戸時代の前後に中国から輸入していた四枚綾の絹織物のことです。その文様に多く用いられていたため、この名がつきました。

光の具合や見る角度によって陰影が変わるのが特徴で、江戸時代には紗綾形に菊や蘭をあしらった「本紋」の綸子もさかんに作られるようになります。

唐紙や神社などにも見られ、黄檗山万福寺の各所に施された「くずし卍」の装飾は有名です。現代では、時代劇や演芸番組のふすまなどでもおなじみです。 

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吉祥文様の種類③「入子菱」


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入子とは、箱や器の中に同じ形の小さな箱や器が何重にも入っているもののことをいいます。入子菱はそのように、菱形が二重三重になっている吉祥文様です。 菱形の模様自体は、日本でもすでに縄文土器に見られるほど古いものです。 その形が、水草の菱の実に似ていることから名づけられました。

菱の繁殖力はとても強いため、子孫繁栄や五穀豊穣の願いを込めた吉祥文様として扱われるようになります。 奈良時代には正倉院の染織品にも多く見られ、平安時代になると貴族の有職文様として定着していきました。直線のみで描きやすかったことも、広く普及した理由の1つと考えられています。

そこから発展した図案も数多くあり、入子菱もその1つです。江戸時代の初期には、能装束の唐織りなどにかなり精緻な入子菱が現れました。 季節に関係なく着やすいこともあって、現代でも着物や帯などに多用されています。

吉祥文様の種類④「青海波」


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青海波は、扇型を交互に重ねて波を表した模様になっています。 どこまでもいつまでも、穏やかに波が続いていることから、未来永劫の平安を祈る吉祥文様として扱われています。

その歴史は古く、埴輪の衣装などにも見ることができます。もともとは古代ペルシャで用いられていたものが、シルクロードを経て飛鳥時代に日本に伝わったと考えられています。

青海波というのは、雅楽の舞曲の題名です。源氏物語の作中では、主人公が舞うことでもよく知られています。その舞人がこの文様をほどこした下襲を着用していたため、こう呼ばれるようになったといわれています。

ただし、その文様が現在の青海波と同じものだったかはよく分かっていません。 実際に波の文様として用いられたことがあきらかなものとなると、鎌倉時代の古瀬戸瓶子という焼き物が最も古いものです。

江戸時代の元禄年間には、勘七という塗師が「青海勘七」と呼ばれるほど得意としたため、吉祥文様として広く流行するようになりました。 着物以外にも陶器や手ぬぐいなどの日用品にも多く見られ、地域によっては厄除けの吉祥模様として使われています。

吉祥文様の種類⑤「亀甲」


出典:写真AC

「鶴は千年亀は万年」というように、亀は古くから長寿の象徴として扱われています。その甲羅を図案化し、六角形を敷き詰めた模様にしたものが亀甲です。 西アジアではすでに紀元前からレリーフとして用いられ、日本でも正倉院の宝物裂のなかにその文様が見られます。

平安時代には有職文様として、貴族の間で定着しました。 亀甲には、基本となる亀甲つなぎ以外にも、その中に花びらをあしらった「亀甲花菱」や、亀甲を3つ合わせて「Y」の形にした「毘沙門亀甲」など、様々な種類があります。

毘沙門亀甲は、仏法を守護する四天王である毘沙門天の装束や甲冑などに用いられ、そのありがたみをより増しています。 家紋や紋章にも多く、出雲大社の亀甲花菱はことに有名です。 他にも、小紋や能装束、織部陶器などにも用いられ、現代では帯や帯締めなどによく見ることができる吉祥文様です。 

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