組子細工とは
規則正しく並ぶ姿はシンプルなデザインでありながら、作り込みは非常に複雑な姿をしています。その凛とした姿から見るものを感動させてくれる「組子細工」(くみこざいく)という工芸品があります。おそらく一度はお寺や神社などで目にしたことがあるはずです。
「組子」とは本来は建具を作る上で必要となる、細かい部材のことを表しています。1700年代に生み出された「組子細工」は、細い板3本で正三角形を正確に組み合わせて作り出す「三組手」といわれる技術が発展したものだといわれています。
また「組子細工」は島根県で多く作られているため、島根県ふるさと伝統工芸品として認定されています。 近代日本における曼荼羅と言われている「組子細工」ですが、飛鳥時代の建築物として歴史的にも有名な法隆寺の金堂・五重塔・中門などの高欄に施されているのが最も古い「組子細工」となります。
室町時代になると障子などにも「組子細工」が施され、さらには欄間や建具、桟など多くの場所でその技術が見られるようになりました。現在では「組子細工」の模様や組み方は200通りを超えると言われており、江戸時代までのシンプルなデザインからは飛躍的に進歩しています。
「組子細工」が表現している世界観は日本の季節を鮮やかに演出してくれていて、その「組子細工」が作り出す光と影の空間は、日本建築の装飾において非常に重要な役割を果たすものとなっています。
組子細工のしくみ
photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋
「組子細工」では釘などを使うことはありません。数ミリからなる細い板に「ほぞ」や「切り込み」を入れたものを丁寧に手作業で組合せることで、あの正確で規則正しい模様を生み出していきます。さらに板の太さを調整したり、板に穴や溝などで加工を加えることでさまざまな模様を表現しています。
「組子細工」の原材料となる木材は主にヒノキや杉などを利用します。木材の特性に合わせて組み込む必要があるため、扱う木材の性質を熟知していることが重要です。
また、コンマ数ミリの差が生まれるだけで、木を組み合わせることが出来なくなるため、職人としての技術力はもとより品質の良い木材を選別できる眼も兼ね備えている必要があります
組子細工のデザイン(柄)
その模様と組み方で200通り以上のデザインを持つ「組子細工」ですが、大きく分けると主なデザインは2種類に区分することができます。
まずは、「菱組子」と呼ばれる菱を基本とした模様で、このデザインは「組子細工」の基本ともいえる模様です。もう1つは「格子組子」と呼ばれている縦と横に網目状に木材を組み合わせる水平と垂直を基本にした「組子細工」です。
これらの組み方を基本としながら、隙間部分などに装飾された木片などをはめ込むことで様々なデザインが生み出されます。 「組子細工」を施す場合には、作り上げる模様により木材や道具を変える必要があり、全ての模様に長ける職人になるには長い修行と経験が必要となります。