英語で「JAPAN」と言えば…おそらくほとんどの方は知っているかと思います。日本語では、「日本」ですよね。しかし、日本という意味以外にもう一つ意味があります。
実は、「JAPAN」には「漆器」という意味もあるのです。漆器は海外で「JAPAN」と呼ばれ、まさに日本の象徴的な工芸品として親しまれています。
今回は、漆器とは具体的に何なのか、お手入れ方法から、漆器の歴史、漆器づくりを体験できるスポットまで紹介していきます。
漆器(しっき)とは?
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漆器とは、ウルシの木から取れる樹液の「漆」を木や紙などに塗り重ねて作られる民芸品のことです。
漆器の原料は木や紙が中心なので、軽いことや、熱伝導率が悪く、温かい物が冷めにくいことが特徴です。また、漆を塗っていることで丈夫になり、大切に使えば一生モノとして使うことが出来ます。
漆は、防腐剤や防水剤として、アジアの広い地域で使用されていたものの、日本ではそれらの役割に加え、独特の質感を生かし、工芸としての地位を確立しました。海外では、漆器のことを「JAPAN」と呼んで親しまれており、まさに日本の工芸品の代表として高く評価されています。
漆器はいつから始まったのか?
漆器以前の漆の使われ方
出典:ウィキメディアコモンズ
漆器が発達する更に数千年前から、アジアでは漆を生活の一部で使われていたと言われています。
漆には、強い接着力があり耐水性があるため、一度固まれば中々離れません。そこで、古代の人々は、木や竹の先に石器や動物の骨などを固定した武器に漆を活用して、狩猟の武器や農業の道具として活用していたと考えられています。
最初期の漆器は縄文時代から
北海道の垣ノ島遺跡や石川県七尾市の三引遺跡から、漆を使った食器や装飾品が出土しており、数千年も昔の縄文時代から漆の利用が始まっていたと考えられています。
高度な精製が必要な朱色の漆器も発見されており、現代人が考えるよりもかなり古くから使われていたことが伺えます。
装飾品としての漆器の姿
出典:ウィキメディアコモンズ
飛鳥時代や平安時代にさしかかると、中国や朝鮮から仏教が伝来し、それに合わせて仏具が盛んに作られました。漆器の表面に漆を塗り、乾く前に金や銀の粉をまくことで、独特の紋様を描く「蒔絵」もこの頃に作られ、技術の高さが伺えます。
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漆器が一般庶民の手に渡ったのは江戸時代頃
漆器が一気に庶民の手に渡ったのは、戦乱が終わり、平和が訪れた江戸時代頃だと言われています。
各藩の大名は、地元の産業の発展を促し、漆器の生産も奨励したと言われており、「津軽塗」「会津塗」などの名産地が多く生まれたのも、この時期だとされています。下地を柿渋で代用した廉価品も多く出回り、大量生産が可能になり、庶民が気軽に手に取ることが出来るようになりました。
漆器が愛用されたのは国内だけでなく、東南アジアやヨーロッパでも広がりを見せ、磁器が「CHINA」と呼ばれたのと同様に、漆器は「JAPAN」と呼ばれ、高い評価を受けて輸出されるようになりました。