数珠とは
オリエンタルな雰囲気と和モダンな雰囲気を持つアクセサリーとして、数珠を買い求め身に付けている外国人観光客の姿を目にする機会が増えました。しかし、本来数珠は仏具の一つであり、ファッションアイテムとしての使い方は残念ながら誤っていると言えるでしょう。
厄除けやお守りとしての役割も担う数珠は「念珠」や「寿珠」とも呼ばれますが、読経の回数を数える使い方もされたため、一般的には数珠と呼ばれるようになったと伝えられています。
正式な数珠は本連(ほんれん)数珠や二輪(ふたわ)数珠と呼ばれるもので、人間の持つ煩悩(ぼんのう)の数と言われる108個の珠で構成されています。珠の1つ1つにそれぞれの煩悩を司る仏が宿るといわれ、人間の内面に潜むあらゆる煩悩が数珠を持つことで鎮められると言われています。
数珠の歴史
出典:写真AC
日本では古くから仏具としての使い方がされている数珠ですが、今から3,500年近く前にインドで生まれたバラモン教にルーツがあると考えられています。
バラモン教で祀られる毘沙門天、弁財天、梵天などの神々の持ち物として、連珠というものが登場します。連珠の使い方は不明ですが、これが現代の数珠の原型と考えられています。
数珠と仏教の係わりは仏教の開祖であるインドの釈迦が「108個のモクケンシの実を繋ぎ仏の名を念ずることで、国の乱れを治め悪病を退散させることができるであろう」と語ったことから取り入れられたと伝えられています。
日本へは今から約1,500年ほど前の仏教伝来と共に数珠が渡来したと伝えられ、正倉院には聖徳太子の愛用品として蜻蛉玉金剛子(とんぼめこんごうし)の数珠や、聖武天皇の遺品とされる水晶と琥珀の数珠二連が収蔵されています。 鎌倉時代に入り仏教が浸透するに従って数珠は、身に付けることができる仏具としての使われ方で僧侶以外の庶民にまで普及したと言われています。
数珠の種類
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本連数珠や二輪数珠と呼ばれる108個の珠で作られた数珠は正式な数珠としての使い方をします。これに対して片手数珠や一輪数珠と呼ばれる珠の数を減らし持ちやすく改良した数珠も存在します。
これらの数珠は略式の数珠としての使われ方をします。 宗派によって僧侶が用いる数珠の種類は異なりますが、在家の信者に対しては一般的には略式の数珠の使用を認めていると言えるでしょう。略式の数珠は基本的に宗派を問わず用いることができますが、日蓮宗では日蓮宗の定める数珠の使用が求められると言えます。
また略式の数珠は一般的に男性用は大きい珠の数珠、女性用は小振りの珠の数珠という使い方がされており、東海・北陸地方の一部の地域では女性用の略式の数珠は葬儀の際は無色か白の珠で房も白の数珠が用いられ、色つきの珠や房の数珠は法事やお墓参り、お寺参りの際に用いるような使われ方が一般的だと言えます。