稲庭うどん400年の歴史、門外不出・一子相伝の技とは

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香川の讃岐うどんや名古屋のきしめんと並ぶ日本三大麺のひとつ「稲庭うどん」は、秋田県南部の稲庭町で作られているうどんです。平たく細い麺はつるんとした喉越しで、冷たいままでも温めても美味しく食べられます。国際線の機内食としても供される稲庭うどんの歴史や製法についてご紹介します。

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庭うどんの歴史

稲庭町は栗駒山をはじめとする山々に囲まれた土地で、清らかな川の流れにも恵まれていたため古くから小麦の栽培が盛んに行われてきました。また、うどんの製造に欠かせない良質な水にも恵まれていたのです。そして、塩も川を使った交易によって運ばれてきたので、稲庭はうどん作りに必要な小麦、水、塩が手に入る恵まれた土地でもありました。

江戸時代初期に稲庭地区で佐藤市兵衛という人物が干しうどんを作っていました。そして、寛文5年(1665)にその製法を二代目にあたる佐藤吉左エ門が引き継ぎ、稲庭干饂飩 宗家 佐藤(稲庭)吉左エ門を創業したのが稲庭うどんの始まりです。

吉左エ門によって改良を重ねてきた佐藤家に伝わる稲庭うどんの製法は、文政 12年 (1829)に佐竹藩より門外不出にすることを命ぜられ、一子相伝の技として子孫に伝えられました。

一子相伝の技を公開

やがて、佐藤藩の藩主が稲庭うどんを江戸幕府に土産物として持参したことから、将軍家や大名たちの間で稲庭うどんの評判が広まったといいます。明治時代には宮内庁御用達になるのですが、その当時は生産量も少なく、一般の人の口に入るようなものではなかったといいます。

やがて、昭和 47年 (1972)に七代目が、300年以上もの間、門外不出一子相伝であった稲庭うどんの製法の公開に踏み切り、家人以外の職人も受け入れたことで稲庭うどんの生産量が増え、一般人の口にも入るようになったのです。

七代目は、家業から産業への転換を図ることで稲庭うどんの伝統的な製法を次世代に伝え、また、一般に広く食べられることにより、稲庭うどんを文化的な価値を高めていきました。

稲庭うどんの製法

稲庭うどんの生地は、小麦粉に塩水を加え団子状のものを練って作ります。塩水の量や濃度はすべて職人の長年の経験と感によって決まり、その日の天候によっても左右されるのです。


熟成させてから再び練るという作業を繰り返し、生地が作られます。そして、熟成が終わった生地はいったんのされて(広げられて)約3cm幅に切られ、さらにそれを棒状に伸ばして角を取ります。

輪を作るように巻きながらたらいに入れて再び熟成させるのですが、この工程は「小巻き」と言われます。ここまでの工程を一日かけて行い、次に2日目。稲庭うどん特有の「手ない」という手作業に入ります。

二本の並行に並んでいる棒に生地を手でよりながら綾がけにしていくのです。この手ないをすることで麺を細くするのですが、きれいに同じ太さにうどんをよるには熟練の技が必要です。

次に伸ばし棒を用いてうどんを圧迫し、生地の中に入っている余分な空気を抜いて麺を平らにする“つぶし”という作業を行います。そして次に、“けた”というハンガーのような道具にうどんをかけて、手でうどんをさすりながら約120cmまで延ばして乾燥させます。

手ないをしてから生地を延ばし、乾燥に取り掛かるまでが2日目の作業です。3日目には乾燥と裁断が行われ、4日目に検品されて製品になります。

ここまでの作業がすべて職人の手によって行われるところと、乾麺であるというのが稲庭うどんの特徴です。乾麺だからこそ、こしがありながらもつるんとした喉越しの良さが作り出せるのです。

稲庭うどんの食べ方

まず、大きな鍋でゆでるのが美味しい稲庭うどんを作る秘訣です。一人前80~100gのうどんに1リットルの湯を使います。まず鍋に湯を沸かし、うどんを入れます。

湯が沸いてきたら、うどんが鍋の中で踊る程度に火を弱めます。時々箸でかきまわしながら様子を見て、ふきこぼれそうだったら火を弱めます。この時、さし水をしないことがポイントです。

うどんの色が乳白透明になったら冷水にとって麺をしめて水を切って仕上げます。つけつゆはだしに濃口しょうゆとみりんを加え、たまり醤油少々で風味付けします。砂糖を少し隠し味に加えるといいでしょう。

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冷麺で食べることも温麺で食べることもでき、また、つけつゆをカレーやトマトソースにするなど、新しい食べ方も提案されています。さらに、この稲庭うどんの製法を利用した、中華乾麺やそうめんも発売されています。

本家で味わうが粋

江戸時代から明治時代、そして昭和になっても門外不出だった稲庭うどんの製法。いまでは稲庭うどんを作る業者も増え、新製品も発案されて、稲庭うどんの新しい時代が築かれようとしています。

本家本元の佐藤養助商店では各地に稲庭うどんが食べられるレストランを出店するだけでなく、本店では稲庭うどんの製造工場見学や手作り体験コースも実施しています。稲庭うどんの作り方だけでなく、美味しく食べるための盛り付け方まで指導してくれるそうです。秘伝の製法そのままに作られる稲庭うどんを味わってみてはいかがでしょうか。

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