【日本三大七味とは?】食卓の名脇役「七味」の歴史や、材料によって代わるその魅力

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おすすめの七味②

やげん堀

元祖七味を売り出した「やげん堀 七味唐辛子本舗」は、日本で一番古い七味の店です。 時は1625年(寛永2年)、中島徳右衛門(徳兵衛)が漢方薬を食に利用できないかと開発し、 江戸の薬研堀(現在の東京十の両国橋あたり)で「七色唐辛子」として売り出したのが始まりです。

「薬研」とは、漢方薬で薬をすり潰す道具のことを指していて、 薬研堀界隈には、その字が示すように、薬問屋や医者が多く住んでいました。 七味唐辛子は、当時の江戸の庶民的な食べ物だった蕎麦にも合い、 客の注文に応じて、目の前で、薬味の調合に応じたりして評判になりました。

中島徳右衛門が薬研堀で売り出したものが七味唐辛子の元祖で、 徳右衛門の創業した薬業商は、現在も東京浅草の「やげん堀 七味唐辛子本舗」として続いています。 ここの七味は、赤唐辛子を焙煎したものと、生の赤唐辛子を使っているのが特徴で、 大・中・小の3種類の辛味を選ぶことができます。

七味の基本がすべてつまった元祖七味の風味と味わいは堪能する価値があります。 別名「医者町」とも言われた薬研堀で、 薬種商人で、漢方薬の研究家でもあった中島徳右衛門の考案した七味唐辛子です。 時の将軍、徳川家光に献上したところ、たいへん気に入られ、 「徳」の字を賜ったという話もあります。

七味唐辛子の成分として調合されている素材の中には、 漢方薬として使われているものや、健康維持に必要な栄養素が多々あります。 ウンシュウミカンの皮から作られる「陳皮」(ちんぴ)は、風邪薬として漢方薬では使われていますし、 ケシの実も、漢方で止瀉薬として使われています。

唐辛子も、発汗作用を助け、消化不良や痛風、水腫等、いろいろな治療に使用されてきました。 味と香りだけでなく、薬効・効能もありそうな七味です。

おすすめの七味③

七味家本舗


清水寺の門前に店を置く「七味家」は創業350年を誇る店で、 当初、草鞋(わらじ)や薬を売る茶店でした。 店の名前も「河内屋」と呼ばれていました。 1655年~1658年の明暦年間、 唐辛子を入れた「からし湯」というものを清水寺に参拝する人々に無償でもてなすことを始め、それが評判を呼び、 いつしか唐辛子にゴマや麻の実、山椒などの薬味を合わせた七味唐がらしを考案し売り出すようになりました。

「七味家」と名前を改めたのが1816年で、七味の専門店となったのは明治の半ばといいます。 ここの七味は、青のりと山椒の香りが特徴で、薄味の関西らしく、 「伏見甘」と呼ばれる京都伏見の辛さをおさえたトウガラシを使い、 黒ゴマ・白ゴマは手炒りで、辛味より香りを大事にした調合になっています。

湿気の多い夏は出荷しないといったことが書かれた古い文献も残っていて、香りへのこだわりが納得できます。 契約農家から最高の品質のものを選んで使っている山椒は七味の香りに与っています。 辛味がおさえてあるため、料理に香りを添える感じの七味です。

おすすめの七味④

原了郭


「やげん堀」「八幡屋礒五郎」「七味家」の三大七味唐辛子ほど有名ではありませんが、 1703年創業の、京都祇園の「原了郭」の七味唐辛子も押さえておきたい七味です。 「原了郭」の初代は、赤穂浪士四十七士の一人だった原惣右衛門元辰の一子、原儀左衛門道喜という人です。

儀左衛門道喜は、のちに剃髪して名を「了郭」と名乗り、店を祇園社門前に開いたのが「原了郭」の始まりです。 漢方の名医だった山脇東洋の処方のもとに、 漢方の原料をいろいろあわせて作った銘菓「御香煎」を製造するのを家業としていたといわれます。

ここのおすすめは、「黒七味」といわれる七味で、原料には、 唐辛子、山椒、白ごま、黒ごま、青のり、けしの実、おの実が使われています。 創業以来、一子相伝で守り続けた製法をもとに、現在もなお、その子孫である十三代目が、 製造のすべての作業を手作業で行っているため、生産量には限りがあり貴重な七味といえます。

「黒七味」という名前の由来となっているこの店独特の濃い茶色い色合いは、 材料をから煎りし、山椒や唐辛子の色が隠れるまで揉みこむことによって出しています。 鼻へ抜ける香りと辛味には他の七味にはない個性があり、クセになる七味です。

【一味と七味の違い】辛さを楽しむか、風味を楽しむか

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