『花が散り、葉桜となったその姿も美しい。わびさびを感じる景色だな』 春の訪れを知らせるように咲き誇り、あっという間に散ってしまう桜。そして散った後もまた違った美しさを感じる。
そんな儚い姿の移り変わりの「美」を表現する「わびさび」という言葉があります。
「わびさび」は昔からある日本独特の美しさを表現する言葉なのですが、皆さんは「わびさび」の意味をご存知でしょうか。
わびさびの意味
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「わびさび」とは美しさや日本人独特の芸術観を表現する言葉で、今は1つの言葉として認識されていますが、「わび」と「さび」それぞれの言葉に違った意味があります。
「わび」とは、気が落ちる・非嘆する・鬱々とするといった負の気持ちを表現する言葉で、「さび」とは、古びた・色褪せた・かれるといった見た目の負を表現する言葉とされています。
どちらも否定的な感情を表現している言葉ですが、一般的に劣化とみなされるものの織りなす変化が、独特で美しいことを「さび」、さびれを受け入れて楽しもうとする心を「わび」とし、日本独特の美意識を表した表現として使われています。
現在では「わびさび」と一括りで使用されることが多く、簡素の中にある落ち着いた寂しい感じや、枯淡の境地を表すと考えられています。
わびさびの由来・言葉の背景
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わびさびの由来・言葉の背景 を見ていきましょう。「わび」は漢字で「侘」・「侘び」と書き、動詞の「詫ぶ(わぶ)」が名詞となったものとされています。「わぶ」には、気落ちする、困って嘆願する、誤るといった意味があります。
「さび」は漢字で「寂び」・「然び」と書かれ、動詞の「さぶ」が名詞となったものとされています。本来は時間の経過によって劣化していく様子や、生命力が衰えていく様の表現を意味しています。
本来は良い概念ではなかった「わび・さび」という言葉ですが、「わび」は中世に近づくにつれて不足の美を美しいものと意識するようになり、鎌倉時代に日本に入ってきた禅宗の影響で積極的に評価され美意識の中に取り込まれて行きます。
「さび」は室町時代に俳諧の世界で重要視されるようになったのをきっかけに、能楽に取り入れられ、美を感じさせる言葉へと変化しています。 「わび・さび」は室町時代の後期に茶の湯と結びついたことで急発展しています。
江戸時代には千利休が茶道の世界と共に「わびさび」の思想を究極まで高めた後、松尾芭蕉に「わび・さび」の精神性が引き継がれ、ここでわびさびが表現する「美しさ」というものが確立されたと考えられています。この頃から「わびさび」を使用した言葉も多く用いられるようになります。
わびさびの使い方
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「紅い絨毯の真ん中で、枝のみが残るもみじの木が役目を果たしたように立ち並ぶ。まさにわびさびの美しさを感じる眺めだ。」 桜と同様、季節の節目に美しい姿と散ってしまった静寂さを見せてくれる樹々。朽ちていく中にも感じられる美しさを表現する際にも使用します。