東京の伝統工芸品「アンチモニー」とは?その歴史や製品をご紹介します

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アンチモニー製品ができるまで


出典:写真AC

アンチモニー製品の加工工程は、大きく分けて4つ。

ひとつ目に鋳型づくり、ふたつ目に鋳造加工、3つ目に研磨・メッキ・着色加工、4つ目に仕上げを行っていきます。

次からは、工程別にどのような作業をするのか見ていきましょう。

鋳型づくり


出典:写真AC

鋳型とは、鋳物(いもの)を鋳造するための型のことです。まず、鋳型には「木型」と「石膏型」の2種類があります。

工芸職人の手によって原型を使って砂で造形した「砂型」をとり、そこへ鋳型屋が合金を流し込んで「金型」を作ります。そして鋳型屋によって作られた金型のパーツを、合わせ屋が強度を高めるためにハンマーで叩いて金型を固めます。ここで水漏れしないようにしっかりと組み合わせ、鋳型にしていくのです。

仕上げに、旋盤(せんばん)やヤスリがけをし、木炭で磨き上げることで鋳型が完成します。

次に、鋳型に彫刻を施していきます。彫刻作業は、まず模様が反対にも写されるように図柄を写し取り、タガネやナナコなどを使用して彫ります。彫刻は、全工程の中で最も職人技が求められるといわれる作業。この彫刻作業は、現代でもアンチモニー工芸が成立した明治時代当時と変わらない技法が使われています。合金で作られた金型のため、美しくて精巧な模様を彫り上げられるのです。

戦前には、ダッチデザイン模様や花鳥・山水・富士山など、日本を象徴するシンボルが彫られていました。しかし、徐々に唐草模様など、近代的な西欧のデザインが取り入れられるようになったのです。

鋳造

鋳造方法には、「焼き吹き」「戻し吹き」「冷吹き」「地金吹き」の4種類があります。

「焼き吹き」は、鋳型を300~350度の炉で地金が溶けて流れるまで熱したあと、湯を入れて少しずつ鋳型を冷やしていく方法。鋳型内の湯の温度、鋳型の傾き加減、湯の流れと空気抜けは、全て職人の勘によるものです。まさに職人技といえるでしょう。

「戻し吹き」は、鋳型の湯口より湯を注入し、10~15秒後に型から湯を出す方法。どんな形状でも対応できる特徴があります。主に、置物や宝石箱などの製品に用いられることが多い手法です。

「冷吹き」は焼き吹きの水冷を省いたシンプルな方法、「地金吹き」は溶解した地金の上に鋳型を浮かせて熱する方法です。この2つの方法は、主に小さな製品の鋳造に用いられます。

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