山形で400年の歴史を誇る伝統野菜「温海(あつみ)かぶ」

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日本には各地に伝統的な方法で作られている野菜がありますが、山形県温海(あつみ)地域の温海かぶもそのひとつ。昔から伝わる焼き畑農業がいまも続けられています。今回は、温味かぶの栽培方法や漬物の漬け方をご紹介します。

山形県温海地域の伝統野菜「温海かぶ」とは

温海かぶとは山形県温海地域に伝わる伝統野菜で、およそ400年の歴史があります。もともとは中央アジア原産の野菜で、シルクロードを伝って、やがて日本にも入ってきました。天明5年(1785年)には、徳川幕府に献上されたとも言われます。

外皮は鮮やかな暗赤色で、中は真っ白なのが印象的な野菜で、山形県温海地域の特産品のひとつです。特に、温海地域の一霞という集落で盛んに作られています。旬は10月~12月。雪が降るまで収穫が続けられます。

主に酢の物や漬物にして食べられているのですが、集落ぐるみ、地域ぐるみで伝統野菜の温海かぶを守っていこうと、温海かぶの生産だけでなく、加工やブランド化も熱心に行われています。

伝統的な「温海かぶ」の栽培方法

温味かぶといえば、焼き畑農業で作られているのが特徴のひとつ。7月下旬になると畑を焼くための準備が進められます。温海かぶの畑は山の急斜面なので、まずその斜面の木を刈り払い乾燥させます。

斜面に植える草木はかぶをはじめ杉や大根、雑穀などを5年置きくらいの間隔で循環させていたのですが、時代が変わって杉はあまり植えられなくなりました。杉を植えると農地に養分が行き渡りすぎて、かぶの根が成長しすぎて、色味も白くなるのです。

伐採した枝を燃やすためには、乾燥する必要があるので、晴れの日が続くタイミングを待って作業が始められますその後、火入れといって、刈り取った枝に火をつけ、農地を焼き払います。また、お盆までにこの作業を終えることが習わしになっています。

そして、焼くことによって養分となる灰ができるのですが、焼いたばかりの灰はふんわりしているそうです。そこに雨が降ったり、朝露がかかったりすることで灰が湿気を含み、温海かぶを栽培する土壌が出来上がるのです。

湿気を含んだ灰の上に温海かぶの種をまくのですが、その時は、種の上に灰がかぶるように、雨が降る直前の日を待って種まきをします。温海かぶは成長が早く、そのため種を蒔いてから一ヶ月もすると間引きをしなければなりません。

間引きの頻度は農家によって違うそうですが、あまり畑に踏み入らず、自然のまま栽培できるよう、最初から浅く種まきをする方法も取られています。やがて10月初旬になると収穫の季節がやってきて、収穫は雪が降る前まで続けられます。

「温海かぶ」の定番調理法、漬物

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温海かぶは漬物にして食べられることがほとんどです。しかし、現代の製法で温海かぶが漬けられるようになったのは、ほんの20年ほど前からなのです。温海かぶの漬物は塩と酢、砂糖のみで保存料などを使用することなく漬けられます。

家庭では一回漬けといって、温海かぶを最初から調味料に漬けていたのですが、この方法では漬物の発酵が進みやすく、販売に適しません。そのためいまでは二回漬けという、最初は何も加えずに温海かぶに重石を乗せ漬け込み、その後で調味液にもう一度漬け込む作業をしています。

さらにさかのぼって昔になると、調味液そのものが現代のものとは違い、味噌と塩、柿の葉や実と一緒に漬物にしていました。

残念ながら、いまも昔の製法で温海かぶの漬物を作っているところはありません。温海かかぶの作り手が減少する中で、なんとか継承していこうと、一霞温海かぶ生産組合では加工所を建設するなど、さまざまな取組がなされています。

出典 photolibrary

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