京扇子含む伝統工芸・職人産業の現状
これは京扇子業界に限らないことですが、伝統産業を扱う企業の間では後継者不足が問題視されています。
その原因は、給料や休暇が少ないなどのイメージが先行するためです。また、「職人さん」というのは厳しいものだという認識が少なからずあるのも大きな理由ではないでしょうか。
最近ではそのような人手不足・技術者不足を解消するために、業界をあげて後継者教育に励んでいるところが多いようです。
特に京扇子業界は、経験や知識が無くてもやる気さえあれば1から育てようという企業も多く、伝統産業に興味があるが未経験だという人もその輪の中に入ることが可能です。
京扇子職人の仕事
京都の扇子作りは分業制になっており、各工程にそれぞれの職人が存在します。
こちらでは基本となる紙扇子の工程をご紹介します。
<京扇子の扇骨加工>
竹を均等な寸法に切り、アクを抜きます。その後、竹を内側部分と外側部分に分け「カワ」と呼ばれる外側部分を加工していきます。
出典:有限会社西野工房
「あてつけ」と呼ばれる作業でカワを削り扇骨を形成します。それから天日干しし、丁寧に磨き、色をつけていきます。
出典:有限会社西野工房
地紙に差し込む部分をさらに削り、バラバラの状態の扇骨を要でとめれば完成です。
<京扇子の地紙加工>
薄い和紙を中心に、その両側に和紙を貼り合わせます。その紙を乾燥させ扇の形に裁断して加飾作業に移ります。
加飾作業では箔押しや絵付けが行われます。この絵付けは手描きと木版画刷りに分かれています。
出典:京都扇子団扇商工協同組合
この地紙加工が終わると「折り」と呼ばれる工程へと回されます。
出典:京都扇子団扇商工協同組合
折り型を使って紙に折り目をつけ、竹べらで扇骨を差し込む穴を広げていきます。そしてつけた折り目に沿って折りたたんだまま紙を切り揃えたら完成です。
<京扇子の仕上げ加工>
完成した扇骨と地紙をくっつける工程になります。「ツケ」と呼ばれる作業です。
地紙加工で広げた差し込み穴に息を吹き込み、さらに穴を広げます。扇骨の両サイド以外の骨に糊をつけ、穴に差し込んでいきます。
出典:舞扇堂
位置が決まれば地紙をたたんだ状態にして拍子木で叩き、重しをかけます。
出典:舞扇堂
それから両サイドの骨を火で温め、扇子がしっかりと閉じるように加工します。この骨を切り揃えて糊をつけ、地紙とくっつけて帯で固定すれば完成となります。
京扇子を学ぶ
普段何気なく使っているものでも、それを作っている人がいます。それを意識するだけで、同じものでも少し違って見えてきます。
なかなか学ぶ機会のない京扇子職人の仕事ですが、それを知ってしまえば、そこから出来たもの1つ1つに職人の魂を感じることができるようになります。
最近では京扇子の工房の見学をさせてくれるところも多いので、少しでも興味があるという方は実際にその目で見てみてはいかがでしょうか。