「治部煮」は、石川県金沢市の代表的な郷土料理です。その発祥は江戸時代までさかのぼり、当時は武家から庶民まで広く親しまれる料理だったそう。
現在では、お祝いの席やおもてなしに欠かせない高級料理として知られています。金沢市内では、割烹や料亭をはじめさまざまな飲食店で提供されており、お店によって異なる具材や味つけを楽しむことができます。
金沢の郷土料理「治部煮」ってどんなもの?
「治部煮」は、鴨肉の切り身に小麦粉をまぶしたもの、すだれ麩、季節の野菜を醤油ベースのだしで煮た料理。とろみのついた甘辛いだし汁とともに具材を味わいます。もともとは真鴨を使った料理ですが、現在では合鴨や鶏肉で代用されることも多くあります。
また煮物にはめずらしく、薬味にわさびを添えるのも特徴のひとつ。「治部煮」というネーミングの由来については諸説あるものの、いまだに解明されていません。
金沢の郷土料理「治部煮」に欠かせない「すだれ麩」
すだれで成形してつくる平たい生麩のことを、金沢では「すだれ麩」と呼びます。お麩自体は室町時代に中国から伝わったとされていますが、「すだれ麩」は加賀藩主前田家の料理人が考案したものだとか。
独特の食感があり、表面のひだに味がよく絡むので、煮物に最適です。乾燥タイプは、お湯で柔らかく戻してから使います。今回は、加賀麩の専門店「不室屋」のものをチョイスしました。
寒い季節にぴったり!金沢の郷土料理「治部煮」のレシピ
〔材料(2人分)〕
合鴨ロース(または鶏肉) 1/2枚
すだれ麩 2枚
ネギ 1/2本
せり 1株
しいたけ 2個
絹さや 6〜7枚
手まり麩 適量
小麦粉 適量
水溶き片栗粉 少々
わさび 適量
〔治部煮の煮汁〕
だし汁 300ml
醤油 大さじ2
みりん 大さじ1
きび砂糖 大さじ1/2
まずは具材の下ごしらえ
ネギは適当な長さに切り、グリルして焼き目をつけておきましょう。せりは熱湯でさっと茹で、水気を切って3cmの長さに切ります。すだれ麩としいたけも食べやすい大きさにカット。絹さやは筋を取り、熱湯で湯がいて冷まします。
鴨肉は薄くそぎ切りにして、両面に小麦粉をまぶすのがポイント。お肉が柔らかく、旨みたっぷりに仕上がります。鶏肉を使う場合も同様です。
〔作り方〕
1.鍋に煮汁の材料をすべて入れて、沸騰する直前まであたためる。
2.小麦粉をまぶした鴨肉をくっつかないように1枚ずつ入れて、2〜3分煮たら取り出す。
3.すだれ麩、ネギ、しいたけ、手まり麩を加えて5分ほど煮る。せりと絹さやはさっと煮汁にくぐらせる程度でOK。
4.具材のみを取り出し、器に盛り付ける。残った煮汁に水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。
5.具材の上から煮汁をとろりとかけ、わさびを添える。
季節の食材で金沢の郷土料理「治部煮」をつくろう
レシピではベーシックな具材のみですが、季節の野菜を取り入れてオリジナルの治部煮をつくるのもおすすめ。彩りがほしいときにはにんじん、旨みを足したいときは里芋やごぼうなど、冷蔵庫にある野菜を使いながら工夫してみましょう。葉物野菜なら、小松菜やほうれん草、春菊もよく合います。
銘々皿に少しずつ盛りつければ、おもてなしの一品にも! ぜひチャレンジしてみてくださいね。