追い回し・下積み
調理師学校を卒業しても、掃除や皿洗い、鍋釜など道具の洗浄、調理場の片付けといった下働きから始まります。この立場の人を「追い回し」といいます。いわゆる料理はできないのですが、誰しも通らねばならない道なのです。
主な業務内容は、掃除や鍋・調理道具・皿などの洗い物。また、器の用意や野菜の下処理なども担当します。
「追い回し」という言葉は、いろんな持ち場から雑務を任され、追い回されるほど忙しいというところからきています。まずはこの持ち場で、店の1日の動きや、各持ち場の先輩たちの業務内容を把握することが必要不可欠です。
八寸場・盛り付け
追い回しの業務を経て、ようやくお客様にお出しする料理に触る仕事を任せてもらえるようになります。
ただし調理ではなく、主に煮方や焼き場が仕込んだ料理を「先付け」や「八寸」として器に盛り付ける作業を担当します。ここでは、先輩や料理長の盛り付けた見本にしたがって、基礎的な盛り付けの感覚を身につけるのです。
焼き場・揚げ場
この辺りから調理らしい作業に携わるようになり、下積みを抜けたという認識になるでしょう。
焼き台や炭火を使った焼き物、てんぷらなどの揚げ物などの加熱調理を担当できるようになります。
何十人も調理場にスタッフがいるような店舗では、焼き物と揚げ物の持場が分かれていてたこともあったようです。現在では、よっぽど大きな調理場でない限り「加熱調理担当」の総称として「焼き場」と一括りになっていることが一般的。
蒸し場・煮方
味つけを担う、料理の仕上がりを左右する重要なポジション。すべての料理の味付けを担当し、チェックするのが業務内容です。出汁をとったり、茶碗蒸しを蒸したり、煮物やお吸い物の味を決めたり。また、先付けや八寸場のお突き出しのためのお浸しなどの料理を用意し、盛り付けに回すなどの業務もあります。
まさに店の味を守っているといっても過言ではないポジション。そのため、店によっては煮方さんの方が、板前さんよりも重要な位置づけをされている場合もあります。
板場
やっとお客様の前のカウンターに立てるようになると「板前」と名乗ることができ、板前のトップの人は「花板」と呼ばれます。さまざまな経験を積んできた板場でも、その仕事だけに終始してはいけません。先輩が何を、どんなふうにしているのか目で見て覚え、仕事以外の時間に自主的に練習を積み重ねる地道な努力もしなければならないのです。
また、師弟関係における礼儀も厳しいため、料理以外にも覚えることがたくさんあります。
板前に向いている人のタイプ・適正
板前になるには、忍耐力と体力が必要不可欠です。一人前の板前になるまでには、長くツラい下積み期間があります。また、上下関係や礼節にも非常に厳しい世界です。そのような環境下で過ごしていくには、相当の覚悟・忍耐力が必要になるでしょう。
手先が器用であったり、美的センスがあったりする人にも、向いているといえますよ。日本料理は、味のおいしさだけでなく、見た目の美しさも求められます。細かな作業で美しいと思わせる料理を提供するには、手先の器用さや盛り付けのセンスも重要なのです。
板前の仕事を知ろう!
修行にかかる年月が長く、礼儀作法も厳しい日本料理の料理人。修行の途中、道半ばで挫折してしまう人もたくさんいます。しかし、日本食が世界的にも注目されている今、日本料理の技術を活かして活躍する場は、国内にも海外にもたくさんあるのです。広い視野で夢と可能性を広げてみましょう。