だるま市は、縁起物のだるまがいっせいに売り出される市です。 日本各地で決まった時期に、様々なだるま市が開かれています。その中でも最も有名なのが、深大寺のだるま市でしょう。 深大寺は東京調布市にある寺院で、その歴史は奈良時代にまで遡ります。
東京では、浅草寺に次いで古いお寺となっています。 その寺名は、西遊記でおなじみの玄奘三蔵法師を砂漠で助けた、水神の深沙大王に由来しているといいます。とても湧き水の豊富な土地で、その水源が古くから信仰の対象になっていたと考えられています。
境内にある不動の滝や、かつて来客をもてなしていたといわれる深大寺そばなども有名です。 その深大寺で開かれる最も大きな行事が、元三大師祭です。元三大師というのは天台宗の高僧良源のことで、深大寺では2mを越す巨大な坐像を祀り、それが厄除け大師として多くの信仰を集めてきました。
深大寺のだるま市は、この元三大師祭に合わせて開かれる市です。寺の境内には300以上もの店が並び、二日間で6万人を超える参詣客で埋め尽くされます。 その規模の大きさから、少林山達磨寺の「少林山七草大祭」、妙法寺の「毘沙門天大祭」と並んで、日本三大だるま市のひとつに数えられています。
だるま市の開催日時とアクセス
photo by motoshi ohmori
深大寺のだるま市は、毎年3月3日〜4日にかけて行われます。2019年は日曜日と月曜日にあたるので4日の月曜日に行くと比較的混雑を避けて楽しめるでしょう。 だるま市が開かれるのは9〜19時まで。ただし、だるま開眼を行う大師堂前の開眼所は9時からお寺の閉まる17時頃までしか開いていません。
目を入れてもらいたい人は、かならずそちらの時間帯に合わせて行動してください。 元三大師大祭の間はとても混雑するので、だるま市にはできれば公共交通機関で来ることをおすすめします。 最寄り駅は、京王線「調布駅」と「つつじヶ丘駅」、中央線・総武線「吉祥寺駅」と「三鷹駅」の4つです。
それぞれバスが出ているので、深大寺行きで「深大寺」まで、吉祥寺行きで「深大寺小学校前」あるいは「深大寺入口」まで、杏林大学病院行きで「深大寺小学校前」まで、三鷹駅行きで「深大寺入口」まで調布中央口駅行きで「深大寺入口」まで来てください。
そこからは、徒歩1〜5分ほどで着きます。 車で来るさいには、境内は駐車できないので近くの有料駐車場を利用してください。10〜16時までは寺院の前の深大寺通りが一方通行になるので気をつけましょう。
なぜ「だるま」と「だるま市」なのか
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深大寺とだるま市にはどのような関係があるのでしょうか。 そもそも、だるまというのは禅宗の祖といわれる達磨大師の姿をあらわしたものです。壁に向かって9年間座禅を組み、その間に手足を腐らせてしまったと伝えられている高僧です。だるまに手足がないのは、そのためです。
やがて、その法衣の赤色が厄除けとして、また形が起き上がり小法師に似ていることから七転び八起に通じるとして、縁起物のあつかいを受けるようになっていきました。 他にも、玩具や着物の柄にも使われるほど、古くから日本人の間ではおなじみです。
一方、深大寺は平安時代に天台宗の寺院となっています。天台宗は中国で開かれた宗派で、開祖ともされる智顗の記した経典は、座禅の教科書にも用いられています。そこから、禅宗では達磨大師と天台大師が同一人物であるという説も出ています。
また、日本の天台宗も座禅を重要な修行のひとつとして捉え、その宗派からは栄西や道元のように後の禅宗につながる僧も多く出ています。 このように、天台宗とだるまにはもともと深い関係がありました。 そして、江戸時代初期の正保三年、深大寺は大火に見舞われ、多くの仏像や宝物などを失ってしまいます。
そんな中、唯一焼け残ったのが元三大師像でした。 以来、その像には七転び八起きの霊験があるとして、だるま信仰に変化していきました。だるま市はその流れで、江戸時代の中頃には始まっていたといわれています。