吉祥文様の種類⑥「矢絣」
出典:写真AC
矢羽を図案化した吉祥文様で、白色と色付きのものが縦に交互に並んでいます。種類としては、二列ごとに向きが変わるか、すべて同じ方向を向いたものが多くなっています。 「矢羽根絣」や「矢筈絣」ともいわれています。
もともとは文様の名前ではなく、矢羽の模様をあしらった絣のことを指していました。それが小紋などにも用いられ、着物の柄そのものの名前として広まっていくようになります。 矢は、一度射れば戻ってくることはありません。そのため、江戸時代には「出戻り」がないようにと縁起をかついで、婚礼の着物にも用いられました。
明治時代から大正時代にかけては、女学生の間で矢絣と海老茶色の袴を組み合わせることが流行します。その姿から、「海老茶式部」という言葉が呼ばれるほどでした。現在でも大学の卒業式に臙脂や紺の矢絣が着用されるのは、その流れを汲んでのことです。 また、時代劇や歌舞伎では腰元の衣装が紫色の矢絣でおなじみです。
吉祥文様の種類⑦「七宝」
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七宝は、円の斜め四方に円を重ねて輪をつないでいった吉祥文様です。重なった部分は花びらのように、空いた空間は星のように見えるのが特徴です。 輪は「和」に繋がり、それがどこまでも続くことから円満や繁栄をあらわした吉祥文様となっています。 古代エジプトでは3500年も前から見られ、中国でも古くから用いられてきました。
日本では、平安時代に「輪違い」という名前で有職文様として確立されています。輪のなかに花菱をあしらうなど、ほかの文様と組み合わせたものも独自に発展していきました。
七宝というのは、大乗仏教の経典「無量寿経」でいう、金、銀、瑠璃、玻璃、珊瑚、瑪瑙、玻璃、硨磲のことで、富貴なものを表す象徴となっています。この吉祥文様に七宝の名が当てられたのは、「四方」が「しっぽう」になまった結果だといわれています。 打掛には必ずといって見られる吉祥文様で、家紋や屏風の裏紙などにもよく用いられています。
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吉祥文様の種類⑧「唐草」
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蔓が伸び、葉や花、果実と絡み合った様子を表す吉祥文様です。 蔓草は生命力が強く、四方八方に伸びていきます。そこから、長寿や繁栄をあらわす吉祥文様として扱われるようになりました。
その元となったと考えられる模様は、古代エジプトやギリシアの遺跡などに見ることができます。 日本には唐や朝鮮からシルクロードを経て持ち込まれ、仏教美術や名物裂などが多く残っています。
平安時代になると有職文様として、より日本らしく、桐や藤、牡丹といったなじみ深い植物に置き換えられ、装束や蒔絵に用いられるようになりました。もともと写実的な文様でしたが、時代が下るにつれ簡略化や図案化が進み、葉や花のいっさいない渦巻き模様のものが増えていきます。
江戸時代には、武家や商家で大切な嫁入り道具を包む道具として、唐草模様の風呂敷が用いられるようになりました。 明治から昭和にかけては、唐草模様の風呂敷はどの家庭にも必ず一枚は見られる生活必需品となっていきます。現在でも、その緑地に白の唐草模様の印象は色濃く残っています。
日本人の生活に溶け込む吉祥文様
出典:写真AC
吉祥文様は古くから日本人の生活になじみ、身の回りの様々なものを彩ってきました。どれも名前や意味を知らなくても、1度は目にしたことのあるものばかりでしょう。
そこにこれだけ多くの意味が込められていたことを知るだけで、とても新鮮に映るのではないでしょうか。 先祖から脈々と受け継がれてきた願いや祈りに想いを馳せつつ、今後は是非吉祥文様の意味を考えて着物や雑貨を選んでみてください。
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