絽とは
絽(ろ)とは、「搦み織り」という手法で織られた着物に用いられるレース状の生地です。何段か平織りをした上で、もじり織りをするもので、線状に隙間模様が入り透け感のある涼しげな生地で、気温が高く、湿気が多い夏向けの素材です。
2本の経糸を捩りながら緯糸と織り込んで経糸を捻じった部分に小さな隙間が生まれるため、そこが透けたように見えます。 織り方には、三本絽、五本絽、七本絽などがあり、隙間模様が多く入っている三本絽は主に夏、また三本絽は秋口に着るのが適しています。
また、絽には生糸で織り上げた生絽と染め上げた糸を織る練絽があり、模様が縦に入るものを縦絽、横に入るものを横絽と呼びます。 種類はつづれ織の絽綴、本駒糸で織った駒絽、ちりめんの糸を使用した絽縮緬など、様々なものがあり、夏場の正装として留袖や訪問着、色無地、小紋、付け下げなどとして仕立てられます。
絽の特徴
絽はしなやかで、ひんやりと肌をすべるような感触を味わうことができます。また、実際に身につけると体に沿った美しいシルエットになります。
着物の色にもよりますが、絽の着物は下の長襦袢がやや透けて見えます。このため、絽の下に着る長襦袢は、白無地のものを選ぶのが一般的です。 種類が多いので購入しやすく、自分にあったものを見つけやすいのも特徴です。
絽と紗の違い
出典:写真AC
紗も絽と同じように隙間を作った織物です。「紗が掛かったように」と例えられるように、紗は生地全体に渡って均一なすき間があるので、透け感があって涼し気に見えるので、絽とともに夏に用いられます。
ただし、時期が微妙に異なり、絽よりも透け感が強い紗はさらに涼しげに見えるため、主に盛夏に着用します。長くても梅雨明けの頃から、8月いっぱいというのが一般的なところとなっています。
一方、絽は7月から8月、隙間が少ない絽縮緬や七本絽、九本絽であれば、単衣の時期もあわせ、6月から9月までと紗よりも長い期間着用することができます。 絽も紗も見た目は似ていますが、よく見ると見分けることができます。
絽は平織と綾織部分があるので、全体的に隙間が縞模様のように入りますが、紗は、隙間の網目が細かく全体的に透け感が強いものです。 また、絽より透け感のある紗は糸と糸の間の隙間が多いので友禅模様などの細やかな柄を染め上げるのは難しくなっています。
ちなみに、夏に用いられる生地としては、絽や紗以外にも、羅があります。日本では古くは冠などに用いられていましたが、織り方が複雑で特殊な機織り機を使わなくてはならないので、現在では紗に押され、生産量は減少しています。