隈取りの種類と意味
初代團十郎が初めて取り入れたとされる「隈取り」は、人形浄瑠璃をアイデアとしたといわれています。 役柄により「隈取り」の筋や色を変えることで、演技だけでは表現しにくかった役柄の特徴をより引き立てる意味合いが込められています。
先に紹介した「むきみ」や「筋隈」、「一本隈」の他にも、「赤っ面」といわれる悪役の中でもあまり身分の高くない悪役に施される「隈取り」や、妖怪の中でも身分によっては藍色などの「隈取り」で表現されるなど実に巧みに色合いを使い分けています。
また、基本的な筋などの模様はあるものの、歌舞伎役者それぞれの個性が表現されるのも「隈取り」の醍醐味といえます。
隈取りに使う道具
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「隈取り」を化粧として施すことを「取る」と表現します。 「隈取り」には下地に鬢付油(びんつけあぶら)を使います。その鬢付油を顔全体に施し、眉毛は鬢付油で固めます。 そして顔全体を水白粉で白く塗りつぶし、「隈」豪快に「取り」ます。
「隈」を「取る」際には筆などは使いません。ではどうするかというと、指で一気にダイナミックに書き入れます。こうすることにより、遠くの観客まで歌舞伎役者が演じている役柄の表情が見て取れるというわけです。
また、歌舞伎には化粧を専門で行うスタイリストのような職柄は存在しません。歌舞伎役者にとって化粧も芸事の1つとされています。そのため歌舞伎役者は自分自身で化粧を施すので役者それぞれの個性も「隈取り」などに現れてくるということになり、そこがまた歌舞伎の魅力を引き出させてくれています。
単純なようで奥深い隈取り
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歌舞伎の世界では欠かせることのできない「隈取り」は、演じている役柄だけではなく歌舞伎役者の個性も際立たせる、歌舞伎を演じる上では無くてはならないものです。
歌舞伎役者が演じている役柄の感情を誇張して、見た目だけでわかりやすくした「隈取り」は、日本人のみならず言葉の分からない外国人でも感情を読み取ることができるため、歌舞伎にあまり馴染みのない人でも役柄を理解できるものとなっています。
歌舞伎の見方は人それぞれですし楽しみ方もまたそれぞれです。しかし、時には単純なようで奥の深い「隈取り」に注目して、歌舞伎の世界をより楽しんでみてはいかがでしょうか。
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