鉛筆やボールペンとは違った書き味と持ち主にあった書き心地に変化する点から長い間人々から愛されてきた万年筆。
今回は万年筆の歴史や書き方のコツなど万年筆について徹底紹介していきます。では、早速、万年筆とは何かについて見ていきましょう。
万年筆とは
万年筆はペン先、ペン芯、インクタンクの三つからなる筆記用具で、日本では別名「萬年筆」とも表記します。
液体の表面張力を利用し、インクの流出量を調整する仕組みを持ちます。また、筆圧によって線の太さに変化を付けたり、ペン先の素材で弾力が変わるなど、一本一本に違いがあります。
最大の特徴は、長く使うことでペン先がなじみ、持ち主にあわせた書き味に変化する点です。劣化しても、部品を交換し、メンテナンスをすることで品質を保つことができるなど、長く楽しむことができる筆記用具です。
万年筆はいつ生まれたのか
出典:写真AC
人類の筆跡の歴史を辿ると、最古のものでは約8,000年前のメソポタミアに原型が発見されており、瓦や板に尖った棒状の道具で傷を付けた跡が残されています。これは最も原始的な筆と言えます。 ペン先が発明されたのは1780年頃です。
イギリスのサミュエル・ハリソンによるもので、筒状に丸めた鉄板を使い、インクの入ったツボに何度も浸しながら使用されました。しかし、これはインク壺を何度も往復するものでした。この後、ペン先に切り割りを入れたり、より適した金属が発見されるなど、改良が進みます。
1809年にイギリスのフォルシュにより現在の形に近いものが作られ、同年、イギリスのブラマーが特許を取得、「Foutain Pen」と名付けられました。
1884年には、アメリカのウォーターマンにより毛細管現象を応用したペン先が開発され、1895年に日本に輸入されました。販売を始めたのは丸善でした。
1911年に坂田製作所(現セーラー万年筆)、1916年に並木製作所(現パイロットコーポレーション)、1924年に中屋製作所(現プラチナ万年筆)が創業するなど、国産メーカーが次々と誕生しました。
万年筆の特徴
出典:写真AC
万年筆の特徴は大きく3点あります。
第一にペン先や軸によって、書き味や太さに大きな違いがあることです。特にペン先の種類によって、字の太さや柔らかさが大きく異なり、自分にあった一本を選ぶ楽しさがあります。
第二に使用感です。書いていく内にペン先の形状が変化し、使用者にあった感触へ近づいていきます。これは他の筆記用具にはない特徴です。
第三に、様々な工夫がなされた、仕組みです。その一つはペン先に切られた「空気溝」で、ペン先からインクが出る量を調節する働きがあります。これにより、ペンを紙に押し当てた際、その強さによってインクタンク内に入る空気の量が変化し、筆圧に併せたインクが出るように作られています。(気泡交換)
しかし、インク内に空気が取り込まれると、外部との気圧差により、インクが外に出すぎてしまいます。それを防ぐのが「くし溝」で、ペン芯に付けられた細い溝により、余分なインクがタンクに戻るよう作られています。(毛細管現象) 気泡交換と毛細管現象を利用することにより、万年筆は飛行機や高山など気圧の低い場所でも使用することができます。