和紙の材料として使われる「トロロアオイ」の役割や作られた紙の特徴

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トロロアオイは、中国原産のアオイ科の植物で、日本へは室町時代に渡来。現在では日本各地で栽培されています。

根からとれる粘液をとろろにたとえ、このような和名がつけられています。また、オクラによく似た花を咲かせることから「花オクラ」とも呼ばれます。

トロロアオイの根にはアラバンなどの粘液質が含まれ、繊維を水中で均一に分散させるという特性を持っています。そのため和紙作りの際の「ねり」として大変重宝されています。 また、かまぼこや蕎麦のつなぎとして、薬用としても使われています。

トロロアオイが育つ地域、気候


出典:写真AC

トロロアオイは温帯な地域を好み、適応能力が高い植物と言われています。

暑さに強い一方で寒さに弱く、生育適温は20~30度ほどで10度以下の低温では生育が停止してしまいます。発芽適温は25度以上と言われています。

国内の生産量は茨城県が90%以上を占めており、2位は埼玉県の6%となります。この他にもトロロアオイが育つ条件が整っている各県で栽培されています。

トロロアオイが紙になる工程

ねりの原料としてトロロアオイを育てる場合は、6月頃に苗を植えます。9~10月になると花が咲きますが、開花・結実がつかないようにつぼみが出来た段階で先端は切り落とします。根の収穫は10~11月に行い、収穫後に水洗いした後、専用の防腐剤につけておきます。

根っこを刻んでつぶし、水につけておくとネバネバの液が出てきますので、これを布で濾して「ねり」の出来上がりです。 紙づくりに使用する際は、まず大きな容器に紙の原料・水・ネリを入れてよくかき混ぜます。

専用の器具を使い液体をすくい上げ、前後左右にゆすりながら持ち上げることで水分が落ち、同時に繊維が絡み合い薄い層が出来上がります。この工程を数回繰り返すことで紙が出来上がります。

トロロアオイの紙づくりにおける役割と他に必要な材料


出典:写真AC

トロロアオイの紙作りにおいての役割は、原料となる植物の繊維を水中で均等に浮遊させることです。紙は植物の繊維を使って作られますが、これらの繊維は水の1.5倍の重さがあるためすぐに沈んでしまいます。

そこで原料と水に加えてねりを混ぜ、紙の原料となる繊維を均一に分散しながら浮遊させます。

このねりのおかげで均質ないい紙がつくられるのです。ネバネバな液体のイメージから、和紙をつなぎとめる・くっつける作用もあると思われがちですが、接着能力はありません。 古くから伝わる和紙の原料は、クワ科の落葉低木の楮(こうぞ)、ジンチョウゲ科の落葉低木の三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物です。

楮は繊維が太く長く強靭という特徴を持ち、障子紙や表具洋紙、美術紙、奉書紙等幅広く使われています。 三椏は繊維が柔軟で細く光沢があるため、印刷用の紙に適している他、金糸銀糸用紙、箔合紙、かな用書道用紙、美術工芸紙などに使用されます。

雁皮は繊維が細く短くて光沢のある優れた原料ですが、生育が遅いというデメリット点があります。

金箔銀箔を打ちのばす箔打ち紙、ふすまの下張りの間似合紙に使用されます。 現在ではこのような材料に合わせて、麻や桑、竹、木材パルプ、藁なども使用されています。

トロロアオイを使って作られた紙の特徴

トロロアオイを使って作られる代表的な紙は「和紙」ですが、現在流通している和紙の多くは化学薬品が使用され機械で製造されています。

一説では、その成分の中に人間に害を及ぼす可能性のある原因物質が含まれていることもあるようです。

その点ではトロロアオイを使ってつくられた和紙には有害物質が含まれず、人に優しく環境に優しいという特徴を持ちます。

また、トロロアオイを使って作られた紙は、丈夫で長持ちし、通気性・透光性・伸縮性に優れています。

トロロアオイの魅力


出典:写真AC

日本古来の伝統的な製法で作られる和紙。薬品を使うことなく上質な紙を作る様は、まさに日本が誇る「技」です。そしてこの工程に絶対に欠かすことの出来ない「トロロアオイ」の存在です。

この存在無くしては、どんなに優れた腕をもつ職人でも均一に広がる紙を作ることは出来ないのです。生産を続ける職人は減っているものの、長い歴史と日本の伝統を守り続けたいものですね。

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