【古くより評価されてきた和紙の原料】楮(こうぞ)から和紙になる過程を紹介

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 楮(こうぞ)とは

楮(こうぞ)はクワ科の落葉低木で、成木の樹高は3メートルにも達します。雌雄同株で広卵形の葉が育ち、春には薄黄緑色の小花が咲き6月頃にキイチゴに似た実が赤く熟します。

太くて長く強靱な楮の樹皮の繊維は三椏(みつまた)や鴈皮(がんぴ)と共に、世界的な評価も高い和紙の原料として古くから利用されて来ました。

紙麻(かみそ)という言葉がかみそ、かうぞ、こうぞと変化して楮と名付けられたという説も存在するほど和紙と楮の関係には歴史があります。

本来楮は日本の野山や川原に自生する植物ですが、毎年収穫できて収量も多く和紙の原料となる繊維が取り出しやすく、さらに栽培が容易であることから各地で広く栽培されています。

楮が育つ地域、気候


出典:写真AC

クワ科の植物である楮は比較的栽培が安易であると言える植物です。中国南部やフィリピン、タイなどが位置する東南アジアで栽培された楮が日本に輸入され機械漉きで製造される和紙の原料として使用されています。

現在は価格の安いタイ産の楮が多く使用される傾向にあります。

一方日本国内で栽培された和紙は手漉きの高級和紙の原料として用いられます。四国の徳島県、高知県などが和紙の原料となる楮の生産地として有名ですが、養蚕業が盛んだった甲信越地方にも大子那須楮(だいごなすこうぞ)と呼ばれる楮の生産地が存在します。

また、ユネスコ無形文化遺産に登録された岐阜県の本美濃紙や、二代続けて人間国宝となった福井県の和紙漉き職人岩野市兵衛氏の漉く和紙の原料として大子那須楮が使用されています。 このように東南アジアから日本国内の甲信越地方までの非常に広い地域で栽培される楮は、栽培地の気候や地域を選ばない植物だと言えるでしょう。

楮はどのようなプロセスで和紙になるのか


出典:写真AC

良質な和紙の原料となる楮ですが、漉き上げて和紙として完成させるまでには非常に多くの地道な作業が必要となります。楮が和紙になるまでのプロセスは次のとおりです。

○刈り取りから保存まで

1. 刈り取り:2年未満の若い楮を11月末~1月の期間に刈り取ります。

2. 楮蒸し:刈り取った楮は1週間以内に長さを揃え、コシキと呼ばれる桶を被せた状態で3~4時間蒸されます。

3. 皮剥ぎ:楮蒸しが完了後、楮が熱いうちに皮を剥ぎ取ります。剥ぎ取られた皮は黒皮と呼ばれます。

4. 乾燥:カビが生えないように剥ぎ取った黒皮を天日に干し、しっかりと乾燥させて保存します。

○保存から紙漉きまで

1. 川晒し:紙漉きに必要な分だけの黒皮を約24時間川などに晒してふやかします。

2. タクリ:ナイフのような道具(タクリコ)で外皮を剥ぎ取り、白皮と呼ばれる内皮と分けます。

3. 煮込み:白皮をソーダ灰を溶かした熱湯で2~3時間煮込み、繊維を軟らかくします。

4. 川晒し:流水の中に約24時間晒し、ソーダ灰を洗い流します。

5. 塵取り:繊維のキズや汚れ、節などを手作業で取り除きます。和紙の仕上がりに影響する重要な作業です。

6. こうかい:パイと呼ばれる樫の角棒で綿情になるまで繊維を叩き解します。

7. ザブリ:解れた繊維を紙漉きに使用する舟に入れ水と糊の働きをするトロロを入れ、大型の櫛のような馬鍬(ませ)と呼ばれる道具で掻き混ぜます。

8. 紙漉き:ザブリが済んだ舟水に紙を漉く「すけた」を浮かべ、紙を漉きます。

○紙漉きから検品まで

1. 紙床(しと):漉き終えた紙はすけたから「す」を取り外し、すに張り付いている紙を紙床に移します。1日で漉き上げた紙が1つの紙床に重ねられ、約1昼夜放置して水を切ります。

2. 圧搾:約1昼夜紙床で放置された紙を重石やジャッキなどを利用して加圧し、水を搾り出します。圧搾した状態でさらに1昼夜放置します。

3. 板張り:圧搾した紙を丁寧に1枚ずつ剥がし、銀杏などの木版に皺にならないように貼り付けます。

4. 乾燥:木版に貼り付けた状態で天日に晒します。天日に晒すことで和紙は白さを増します。

5. 検品:乾燥が終った和紙を漉きムラや傷がないか検品し製品となります。 このような合計17ものプロセスを経て楮が手すき和紙に生まれ変わります。

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