裏千家の歴史や魅力│茶道界最大の流派、なぜ「裏」なのかを説明

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千利休の孫が開祖、裏千家とは?

裏千家とは、茶道を代表する流派の一つです。 千利休を開祖とする千家は「表」「裏」「武者小路」の三千家に分かれています。裏千家はその中の一つであり、分家のようなものと認識しても間違いではありません。

いずれも茶道を嗜む者なら知らない者はいない有名な流派ですが、その中でも学校の授業などで教えられているのは、裏千家が多数です。 裏千家は他にもカジュアルな服装で誰でも楽しめる初心者向けの茶道教室などを開催しており、茶道は決して敷居の高いものではないという事を実践しています。

立礼(りゅうれい)という椅子に座った状態での茶道教室もあるので、今日では年齢性別に関係なく楽しめる趣味の一つとして裏千家を嗜む人も増えているようです。 難しいイメージのある茶道をもっと気軽に楽しめるようにと、間口を広げた活動に積極的に取り組んでいる事は裏千家という流派の特徴の一つと言えます。

茶道界に大きく貢献した裏千家の歴史


出典:写真AC

裏千家の歴史は、利休の孫である千宗旦が「不審菴」を江岑宗左に譲り、隠居所として建てた茶室「今日庵」が宗旦から四男の宗室に譲られたところから始まったとされています。

宗旦が元々住んでいた「不審菴」は三男の宗左に受け継がれているので、ここで千家は表と裏の二つに分かれ、それぞれに発展していく事になります。

慶安5年(1652年)、前田利常に士官した宗室は精力的に活動を続け、後に四代を継承しますが時代の波に呑まれ思うように流派を発展させていく事は出来ませんでした。

飢饉や洪水など現代ではあまり馴染みのない災害も当時においては珍しい話ではなく、金融問題なども絡み人々に茶道へ関心をもつ余裕がなかったという事です。 その後裏千家の歴史が大きく動いたのは十一代精中宗室の時代になります。

幕末から明治へと大きく世の中が変わる中で外国人への茶道の提供などを行い、注目を集めるとともに名前を広める事に成功します。

さらに時代が流れると女学校教育に茶道を取り入れ、書籍の出版や外国での立案などを行い、今まで茶道に縁のなかった人々にも裏千家の名前は広く知れ渡る事になりました。

裏千家はなぜ「裏」なのか


出典:写真AC

裏と付くぐらいなので当然表も存在しますが、何も後ろ暗いところがあって自ら裏と名乗っているわけではありません。 始まりは表も裏も同じ千利休を祖としています。

利休の孫にあたる三代宗旦が受け継いだ茶室「不審菴」から見て、通りの裏に建てた「今日庵」を始まりとした茶道が裏千家となります。 裏千家に裏という言葉が付いているのは、裏通りに建てた茶室に起源があるからなのです。

元は同じ流派であり表裏とも「わびさび」という美意識を追求する姿勢は共通のものなので、作法やお点前に細かい違いはあっても大きな差は見られません。

しかし保守的と言われる事の多い表千家に比べて、裏千家は茶道の発展を願いときに積極的にメディアなどへ露出する事があるため、茶道に縁のない人たちも目にする機会が多くなっています。

他の千家との関係性


出典:写真AC

表千家、裏千家、武者小路千家の三千家は全て千利休を開祖とする流派で、細かな違いはありながらも兄弟のように考える事ができます。 表千家の七代如心斎が「千家を名乗るのは表千家、裏千家、武者小路千家の嫡男のみ」と定めたため、茶道において千家といえばこの三つのいずれかを指す事となりました。

表千家と武者小路千家は比較的作法の内容が似ているのに対し、裏千家は独自の解釈により細かい点で違いが多く見られます。 これは裏千家が外国人や若者など様々な人に向けて茶道を幅広く展開したためでもあり、伝統に囚われるだけでなく新しい試みに積極的に取り組んだ結果とも言われています。

しかし作法に違いがあっても互いにいがみ合うような関係ではなく、三つの流派に分かれて以降も良好な仲を続けています。

「わびさび」を追求していくうえでは伝統を守る事も新しい道を探す事も大切であり、それぞれの流派に合ったやり方で茶道という文化を現代に伝えています。

誰でも楽しめるように工夫された裏千家の作法


出典:写真AC

裏千家の作法は比較的自由なもので、半年間で基本的な事を覚えられる初心者向けの教室なども各地で開かれています。しかし本格的に学ぼうと考えた際はその限りではありません。

足捌き一つを取っても細かい決まり事が存在します。茶室に入る際に右足から入り、畳は一畳を四歩で歩かなくてはなりません。

畳を歩く際の歩数は表千家と武者小路千家は同じ六歩なので、歩き方だけを見ても裏千家が特徴的な事がよく表されています。

他にも薄茶を点てる際によく泡立てる、茶筅は白竹のものを使う、菓子を入れるのに用いる器に蓋がないなどの細かい違いはいくつもあります。 また、点てたお茶を出すときに時計周りに茶器を回し、茶器の「表」をお客様に向けて出すのも特徴的です。

このように細かい作法の違いはありますが、全体の流れで見た場合は他二つの千家流派と大きな違いはありません。

裏千家の最も大きな特徴としては誰でも楽しめるように茶道を広めるという点に集約されるので、少しでも興味がある人は教室などに参加して実際にレクチャーを受けてみるのが一番です。

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