以下のようなニュースがあります。
「エジプトとイスラエル、IS一掃のためシナイ半島で呉越同舟」
新聞紙面にもよく登場する熟語ですが、「呉越同舟」の意味を知っていますか。さらにこんな使い方もあります。
「U-17日本代表は、対戦相手のニューカレドニアと呉越同舟でコルカタ入り」。
両方に「呉越同舟」の言葉が入っていますが、同じ使い方をしているようで、少々違います。
呉越同舟の意味
出典:写真AC
呉越同舟は、故事成語と呼ばれる熟語です。中国の故事に由来したもので、特定の状況を一語で指し示す場合に非常に便利です。
本来の意味は、中の悪い者同士が、共通の利害のために協力するさまをあらわします。エジプトとイスラエルは現代の中東における長年の宿敵ですから、これが共通の敵であるISと闘うために協力するとういのは、まさに「呉越同舟」の本来の意味です。
一方、U-17日本代表が対戦国チームと同じ飛行機に乗った例ですと、随分ニュアンスが違います。二つのチームは別に試合以外でいがみ合っているわけでもないですし、別に協力もしません。このような使い方も今や普通になっています。
呉越同舟の由来・言葉の背景
呉越同舟のいわれですが、この「呉」「越」はそれぞれ、中国の春秋・戦国時代の国の名称です。呉越両国は、長年にわたる宿敵同士であり、国民一人一人に至るまで互いに憎み合っており、しばしば戦闘を繰り広げていました。
「呉」「越」の憎しみあう双方であっても、同じ船に乗って川を渡る際、強い風で転覆しそうなれば、互いに助け合うだろうという例えから、この言葉が生まれました。あくまで例えであり、実際に呉越両国が同じ船に乗ったという事実はありません。
呉越同舟を使う場面
出典:写真AC
「西武ホールディングスと東急不動産が、会員制ホテル事業で提携、『呉越同舟』へ」このように、長年の宿敵同士が共通の利益のために協力するというのは、本来の「呉越同舟」の使い方といえます。
一方、「同舟」つまり同じ船に乗るという点を強調した結果なのか、特にプロスポーツ界において、異なるチームの選手が同じ飛行機に搭乗するというだけでも「呉越同舟」が使われます。「西武とロッテが高知から同じチャーター便で宮崎入り」。このような用例は、派生したものです。