沖縄の奇祭、パーントゥ・プナハとは?
パーントゥ・プナハは、宮古島北部の平良島尻に伝わる祈願祭です。 祭りは一年間かけて、旧暦3月末から4月初め、5月末から6月初め、そして9月吉日の3回に分けて行われます。
一般的にパーントゥ・プナハとして知られているのは、最後に行われる厄払いの行事です。 厄払いは、2日間かけて行われます。 まず1日目は、集落に災厄が入り込まないように結界を張ります。
そして2日目。木彫りの仮面をかぶった泥まみれの神様「パーントゥ」に扮した3人の青年が、集落中の人々や建物など、あらゆるものに泥を塗りたくっていきます。 逃げまどう人々を、異形の神様が追い回すその光景はまさに奇祭そのもの。 この泥を塗られることで、人々は一年間無病息災で過ごせるようになるといわれています。
パーントゥ・プハナ祭り 2018年の日程・アクセスなど
出典:写真AC
厄払いの行事は、旧暦9月の戊の日から数日のうちに行われます。 ただし、集落の神職者が決定するまではその日程は分かりません。また、最近では大勢の観光客が訪れ、トラブルが頻発するようになったため、数日前まで公表されることはなくなりました。
そのため、パーントゥ・プナハ目的の観光旅行は難しくなっています。 だいたい10月の週末に行われることが多いので、どうしてもパーントゥ・プナハを体験したい人は、その時期を狙って沖縄や宮古島に長期滞在するのもよいでしょう。
島尻へのアクセスは、宮古島平良市街から車で北へ20~40分。指定の駐車場があるので、そこから集落の中心部へと向かいます。
パーントゥとは
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「パーントゥ」とは、宮古島地方の方言で「異様な形相のもの」。つまり、人ならざる鬼や妖怪、そして神様をあらわす言葉です。 その語源は、「パーン(食べる)」に「ピトゥ(人)」が合わさってできた、という説があります。
神様の出で立ちは異様そのもの。無表情な木彫りの仮面を着け、キャーンと呼ばれるシイノキカズラの蔓草をまとい、その身には灰色の泥が塗りたくられています。 この泥はただの泥ではなく、宮島小学校の東にある「ンマリガー」という神聖な泉から取ったものを使います。
かつて集落で生まれた赤ん坊は、かならずこの水を産湯に使っていました。 神様を演じるのは、地区のなかから選ばれた3人の青年です。 異様な姿で人々を追いかけ回す姿は恐ろしげですが、実は福をみんなに分け与えるとてもありがたい神様なのです。
パーントゥ・プナハ祭りの歴史
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パーントゥ・プナハの起源は、百数十年前まで遡ります。 ある祭りの日、集落の海岸に、クバの葉に包まれた木彫りの仮面が流れ着きました。 その不気味さに人々は恐れますが、神女(ミズマイ)のお告げにより、それが海の向こうからやって来た神様だと知らされます。
神女は吉兆のしるしとして、仮面を大切に扱うよう指示しました。 その後、仮面を被った若者がンマリガーの泉の泥を全身に塗り、神様になったと言い伝えられています。 それ以来、パーントゥ・プナハは集落の祭りとして代々受け継がれてきました。
数十年前までは島尻の電灯は十分ではなく、暗がりに人々を求めさまようパーントゥの姿は、まさにこの世のものとは思えなかったといいます。 現在では、観光客でも気軽に参加できる、より開かれたお祭りとなりました。 ただし、日程や儀式の段取りなどは古くからの掟を守り続け、そのほとんどは集落の人々にさえ明かされていません。
また、その貴重さから、1993年には国の重要無形民俗文化財に指定されました。 また、2016年にはUNESCOに無形文化遺産への登録を提案。2018年秋に、審議されることが決まっています。
パーントゥ・プナハ祭りの特徴・見どころ
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パーントゥ・プナハの最大の見どころは、泥を塗りたくる神様から逃げ回る人々の姿です。 17時ちょうどにウマリガーから現れると、3体のパーントゥは奇声を上げながら人々のあとを追いかけ回します。 相手は、老若男女の区別もありません。
街中のあらゆる人が抱きつかれ、覆いかぶさられ、泥まみれになっていきます。幼い子供たちのなかには、泣きながら逃げまどう様子も。 もちろん、警察や観光客も例外ではありません。 家の中や車まで、誰彼かまわず泥で汚されていくその光景は、まさにお祭りでなければ見られないシュールさ。
神様と分かっていても、その異様な姿から、ついつい真剣に逃げ出したくなるくらいスリル満点です。 泥遊びや鬼ごっこのように、童心に帰って楽しめるのも特徴といえるでしょう。
参加する場合は、カメラの防水対策や、汚れてもよい服を着ていくのが必須です。レインコートを用意しておくのもよいでしょう。泥は匂いが強く数日間は残ってしまうので、その点は覚悟しておきましょう。