「融通無碍(ゆうずうむげ)」はお経から出来た言葉?|意味と使い方

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私達の生活の中には、様々な所以や謂れがあるにも関わらず、知らず知らずのうちに使われている言葉が多々あります。次のようなフレーズの中で「融通無碍(ゆうずうむげ)」という言葉を見聞きしたことはないでしょうか?

「彼がどんな仕事も融通無碍に対処をして、ちゃんと成果を出してくる事には感服するよ。」

「君の融通無碍な着想のおかげで、大ヒット商品を作り出すことができた。」

「融通」という言葉はよく使うという人でも、「融通無碍」はあまり使わないということが多いかもしれません。では、この「融通無碍」という言葉はどのような意味なのでしょうか?この記事で、みなさんと一緒に見ていくことにしましょう。

【意味】 価値観や考え方、行動に関わらず、どのような状況でも臨機応変に対処するさま、

どんな状況でもその時々で最善の方法で対処するさま。

【由来】 華厳経というお経の言葉から
【類語】 自由自在、臨機応変
【対義語】 自由自在、臨機応変
【英訳】 「tactful」「flexible」「 versatile 」

「融通無碍」とはどんな意味?


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融通無碍(ゆうずうむげ)という言葉は、価値観や考え方、行動に関わらず、どのような状況でも臨機応変に対処する、どんな状況でもその時々で最善の方法で対処する、という意味を表しています。

四字熟語として以外にも、「融通」という二字熟語を頻繁に使うという方は少なからずいるのではないでしょうか。現代の用法では、お金や日程の都合をつけたりなど、後程紹介する原義とは異なり世俗的な使い方をされることが多くありますよね。

今や二字熟語の融通のほうが広まってしまったように思えますが、もともとは融通無碍という四字熟語だったのです。

ちなみに、「融通」は滞りなく通ることで、「無碍」は妨げのないことです。融通無礙とも書きます。よく「無碍」は「無下」と誤った書き方をされることがありますが、「無下」とは取り立てて考慮する必要がないとして扱うことを指すので、まったく違った意味になってしまいます。融通無碍と書く際には、注意してくださいね。

「融通無碍」の由来は?


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ではこの融通無碍はどのような由来を持っているのでしょうか?

この融通無碍という言葉、実は華厳経というお経の言葉から来ていると言われています。仏教での融通無碍は、それぞれが溶け合い融合をする事で通い合っている、調和をする、という解釈を含んでいます。

この融通無碍の世界観が華厳経の思想を表しており、世界の中ではそれぞれが孤立しているのではなく互いに関係しあって調和を成し遂げている、それらが相まって、更に相乗効果をもたらしているというものだとされているのです。

仏教の中では「融通」という言葉は、別のものが融けあう事で双方が通い合い、助けあって、支え合うという他を思いやるという慈愛の心を指しているのです。現代の私達から見ると、ちょっと世離れした思想です。

先ほど説明したように、現代では少し世俗的な発想に立ち返って、金銭の都合をつけるという意味合いで融通と言う言葉がよく使われていますよね。

本来は仏教用語から来ているのですが、大きな視点で物事を見る融通無碍本来の言葉の意味合いは世俗的ではないため、個人の視点から都合がよいという意味合いで融通という言葉が使われているのでしょう。

「融通無碍」の由来、華厳経とは?

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華厳経とは、4世紀ごろに中央アジアで成立したといわれているお経のことです。正式名称を『大方広仏華厳経』といい、原典はサンスクリット語で書かれていたとされています。

もともとは短い経典がそれぞれ散らばっており、それらを束ねたものが華厳経といわれています。最初から長い経典として在ったわけではないというわけですね。

思想の内容としては、広い世界を包み込む「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」が、一切の衆生(人間)、万物とともにあり、さらに毘盧遮那仏は一切の衆生と万物を救済するという、一切即一(一即一切とも)という世界観を軸としています。

また華厳経は中国の唐の僧、杜順(とじゅん)が開祖である「華厳宗」の聖典でもあります。日本には奈良時代に唐から伝わってきたとされ、南都六宗の一つに数えられています。世界史や日本史で習ったという方もいるかもしれませんね。それに、奈良の東大寺が華厳宗の大本山であるという話は有名ではないでしょうか。

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