「窓の外を見てごらん。狐の嫁入りだよ。」こんな言葉を聞いたことはあるでしょうか。さて、窓の外はどんな光景が広がっているでしょう。
狐の嫁入りの意味
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狐の嫁入りには、2つの意味があります。
1つは、太陽が照っているのに雨が降ること。いわゆるお天気雨です。先に挙げた会話では、この意味で用いています。
2つは、夜間に無数の怪火が行列のように並ぶ現象を差します。山間などの明かりがあるはずのない場所を、まるで花嫁行列の提灯が行くかのような不可思議な光景を、昔の人は「狐が嫁入りしている」と考えました。
ちなみに、この現象は『眉唾』という言葉とも深く関わっています。眉に唾を塗っておけば、狐に化かされることはないと言われています。狐の嫁入りに遭遇したとき、眉に唾を塗れば、真実の狐の姿が見えるというわけです。
狐の嫁入りという言葉が使われるのは、関東以西の本州、四国、九州地方です。初めは、怪現象として2つ目の意味で用いられました。その後、同じく不可思議なことのたとえとして、1つ目の意味で使われるようになったとみられます。現在では、迷信めいた2つ目の意味は薄れ、1つ目の意味が一般的になっています。
狐の嫁入りの由来
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昔の人は、説明のつかないこと、不思議なことがあると、人を化かす狐と関連付けて考えました。人を化かすというと悪いイメージに聞こえますが、1つ目の意味であるお天気雨は、豊作の吉兆と言われます。狐は、稲荷神社の使いでもあります。稲荷とは『稲生り』、すなわち農業に関わる神様です。
また、狐は人にとって身近な存在でした。狐は一夫一婦制で、決まったペアで毎年子どもを育てます。特定の家族を持っているように見えるその姿を、昔の人はよく知っていました。狐は人によく似た暮らしをしている生き物であるので、嫁入り行列をしているという発想が生まれたのです。人の暮らしの傍で生き、親しみがあるからこそ、狐に関わる言葉が根付いたのです。
狐の嫁入りを使う場面
それでは、狐の嫁入りを実際の会話で使ってみましょう。現代では1つ目の意味で用いることがほとんどでしょう。
・「雨が降ってきたけれど、狐の嫁入りだからすぐ止みそうだよ。」
・「あっ、狐の嫁入りだ! 洗濯物を干したままだ。どうしよう。」
このように、天気雨を言い換えるだけで、特別な感じがします。明るい空のもと、ぱらりぱらりと雨が降る様子は美しいものです。