石臼の歴史
石臼の歴史は古く、紀元前3,000年頃古代エジプトにおいてサドルカーンという石臼で小麦を挽きパンを焼いていたとされます。
サドルカーンは、平面の石の皿に小麦の粒を入れ、その上から体重をかけて石で磨り潰すものでしたが、紀元前600年頃の古代オリエント時代には上下2段の石を回転させる回転石臼が考案され、より粒の細かい小麦粉を作れるようになりました。
日本には中国から約1400年前に石臼が伝わったといわれていますが、当初は権力や財力を持ったごく限られた階層の人々が保有するもので、一般庶民に普及したのは江戸時代中期のことだといわれています。
それ以前は、穀物を粉にするにはすべてつき臼を用いていたため、石臼が普及すると能率は格段に向上しました。
石臼の特徴
出典:写真AC
石臼は重量があり、原料をまんべんなく挽くことができ粒が揃うのが特徴です。また、石臼はゆっくり挽くので熱が発生しにくく、原料の栄養素を破壊したり、風味を奪ったりということがないという利点もあります。
このため、味やコク、香りを最大限に引き出すことができます。 石臼で最も重要なのは上臼と下臼の擦り合う、ふくみと呼ばれる微妙なすきまの調整と目立て作業です。
かつては「目とり」という石臼の目立てを行う専門の職人がいて、一つ一つ時間をかけて石臼の目立てを行っていました。 一般的に石臼に使用される石材は、安山岩系が多くこれは柔らかい石ですが、組成物が荒いためにほどよく結合部が剥がれることで、長時間の使用に耐えることができます。
一方、御影石のような硬く堅牢な石材を用いると、より細かく挽くことができますが、表面が滑らかなので頻繁に目立てが必要です。
石臼の使い方
出典:写真AC
石臼には中心から放射状に出ている8本の主溝と呼ばれる目が上臼と下臼に刻まれています。このように8つに分かれている石臼を8分画といい、主溝の本数によって6分画、5分画、7分画などがあります。
また、主溝に対して平行な溝を副溝といい、これらのパターンは上臼と下臼とも同様ですが、重ねると裏返しになるので、実際に粉を挽く際には交差した状態になります。
挽き方は、取っ手を持ち、通常上臼を反時計回りに回します。速く回しすぎると荒い粉になってしまうので、2秒に1回転ほどのスピードで回し、穀粒は穴の中で詰まってしまわないよう、入れすぎに注意します。
溝はいずれも石臼の外方向に向かって動き、石臼の中の粉がいっぱいになると上臼と下臼の合わせ目から粉が出てきます。このため、石臼は逆に回すと粉が出てきません。
石臼豆腐
豆腐を作る際、石臼を使う場合には、大豆を水挽きします。これを石臼豆腐と呼んだりしますが、水挽きではまず大豆を水に浸し8~24時間、十分水を吸わせてから、さらに水を加えながら石臼で大豆をすりつぶしていきます。これによりできた白い粥状のものを呉(ご)といいます。
そして、こし袋に入れ、圧力をかけ絞った乳白色の液体が豆乳、袋に残った固形物がおからです。その後、釜炊きをし、冷やしてにがりを打ち豆腐箱に入れて水抜きすると、豆腐ができあがります。
機械を使えばあっという間に作ることができる豆乳ですが、石臼を使う場合は、少しずつ大豆を投入し、じっくり挽き、絞りあげるのも手作業で時間をかけます。 こうして作られる豆腐は一見非効率ですが甘味がしっかり蓄えられた濃厚でえぐみのない、本来の豆腐の味を持っています。