街並みや人々の暮らしのなかに伝統工芸が息づいている、石川県金沢市。そこかしこに点在するショップやギャラリーを覗けば、デザインと実用性を兼ね備えた、素敵なアイテムに出合うことができます。石川を代表する工芸品というと、まっさきに思い浮かぶのが九谷焼です。華やかな色彩と日本らしい伝統柄が魅力で、鑑賞用としてコレクションされるものも多いといいます。
九谷焼ってどんなもの?
九谷焼は、石川県南部の金沢市、小松市、加賀市、能美市で生産されている色絵の磁器です。1655年、陶石の産地・九谷村で作り始められたものは「古九谷」と呼ばれています。約50年後に廃窯になったものの、江戸時代後期には制作が復活し、明治時代以降は量産化とともに「新九谷」と呼ばれ親しまれるようになりました。
現在は、職人によって伝統的な技術が継承される一方で、ライフスタイルに合わせた多彩なデザインの器が生み出されています。
青郊窯が提案する、新しい九谷焼のスタイル
大正初期に開業した老舗窯元、青郊窯は、高価な印象を持たれがちな九谷焼を、日常使いのためのアイテムとして提案しています。手描きのような立体感にこだわって新しい転写シールを作る、鮮やかな色合いを再現するため独自に無鉛の和絵具を開発するなど、いわゆる量産型の食器とは一線を画すスタイルが素敵。
「九谷焼をもっと多くの人に知ってもらいたい」という思いから生まれた商品のなかで、おすすめのシリーズを3つご紹介します。
豆皿 名品コレクション
青郊窯の器において、ブームの火付け役となった豆皿。「縁起豆皿」シリーズも合わせると、30種類以上のデザインがあり、テイストもさまざまです。家族でそれぞれ好きなものを選んで使ったり、どのお皿にどんな料理をのせるか考えたりするのも、楽しいですね。
ちなみに筆者のお気に入りは、「古九谷色絵牡丹文」。シックな色使いで、テーブルコーディネートを大人っぽく仕上げるのに活躍してくれています。
九谷八趣皿
お皿全体に模様が描かれている豆皿に対して、シンプルなアレンジの八趣皿。8種類の異なる縁のデザインに、ちょこんと描かれたイラストがポイントです。
取り皿にはもちろん、お浸しや漬物などちょっとしたおつまみをのせるのにちょうど良いサイズ。写真は4号ですが、もう少し大きめの5号もあります。
縁起ちょこコレクション
20の柄をそろえた九谷焼のおちょこシリーズは、縁起ものモチーフです。鶴や桜などの定番柄から獅子舞、風神雷神といったポップでユニークなものまであり、どれを選ぼうか迷ってしまいます。鮮やかなのに派手すぎない、絶妙な色合いにうっとり。
九谷焼を、伝統工芸品を、身近に
青郊窯が手がけるアイテムは、「一般の人には手の届かない美術品」という伝統工芸品である九谷焼のイメージを、より身近なものに変えてくれます。ファッション感覚でコーディネートを楽しんだり、さまざまなシリーズをコレクションしたり…。伝統柄に自然と親しめるのも良いところですね。
九谷焼模様を粋に使いこなす
いつもの食卓に一つ、ふたつ取り入れるだけで、全体の印象がぐっと変わるはず。また、食器類以外にも、カードケースやボールペン、コンパクトミラーなど、たくさんの商品が販売されているんですよ。金沢旅行に出かけた際は、おみやげショップなどで探してみてくださいね。
文・写真/ゆさ みずあ