七五三や成人式、結婚式などの、晴れ舞台に欠かせない着物。今でこそ冠婚葬祭などの、行事の際にしか着られなくなりましたが、昭和の初頭までは着物が普段着として着られていました。
我々日本人にとって馴染み深い着物ですが、着物の単位として用いられているのが反です。
着物のことを反物といいますが、その呼び方は実はこの単位からきているのです。「一反」はどれくらいの長さを指すのかといいますと、幅が36センチ、長さは12メートルもあります。
このように十分な長さがあったので、江戸時代には大人物の着物が着られなくなると、子供用に仕立て直し、それが着られなくなれば、赤子のいる家ならおしめにしたり、そうでなければ雑巾にしたりと、余すとこなく着物を再利用して使っていたのです。
一反の歴史
出典:写真AC
着物の単位として知られている反は、一体いつから使われるようになったのか知っていますか?
答えは江戸時代からです。江戸時代に庶民や武士などを中心に着られていた小袖に、必要な幅や長さを一反と決めたのがはじまりです。また時代の変遷により、一反の幅や長さは変化していきました。
「反」の他に着物を含む織物単位として「疋」、「段」、「端」の3つがあります。これらの単位は、それぞれ織物によって使い分けられています。
「疋」は絹織物、「段」と「端」は麻織物に使われており、また「反」は「疋」と同様絹織物を指す単位ですが、長さは疋の半分となっています。このように着物の単位は疋や段、端、そして反の4つがあり、それらの単位は織物に応じて使い分けられてきたのです。
一反の広さ
「反」という単位は長さだけでなく、田んぼや畑などの測量する際の面積の広さとしても使われていました。
一反は300坪でおよそ31.5m×31.5m=992.25㎡の大きさです。畳で表すと600畳の広さになります。他にも面積を表す単位は「歩」「畝」「町」など様々あります。大きい順で並べると「歩<畝<反<町」となります。
一反分の着物に必要な糸の長さと繭の量
前述したように、一反は幅が36センチ、長さは12メートルと説明しました。12メートルの長さに及ぶ、絹織物を織るのに糸はかなり多い糸が必要です。一反の絹織物を織るためには、糸の長さは少なくとも390万mは必要になります。
一反の着物1つを織るために、これだけの糸が使われています。そして絹織物に使われている糸には、蚕の吐き出した繭が使われており、繭の長さは1つあたり1300メートルほどなので、繭が3000個も使われていることになります。さらにその繭を乾燥させて煮て縒って糸にします。
このようにして生糸ができ、一反の着物ができるのです。着物は糸ひとつとっても、これだけの手間暇を掛けて作られているのです。