まにまにを使った和歌
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「まにまに」を使用した和歌もあるのでご紹介します。
「このたびは 幣も取りあへず 手向(たむけ)山紅葉(もみぢ)の錦 神のまにまに 」
この句を現代訳していきましょう。 まず「このたびは」、というのは旅と度が重なっています。 幣(ぬさ)というのは、道祖神に捧げる色鮮やかな木綿や錦などの布で作ったささげものです。
これが「取りあへず」は、用意することが出来なかったという意味です。 神のまにまには、神様のこころのままにという意味です。 すると、歌の現代訳はこうなります。
「今回の旅は、神様へ捧げる幣を用意することもできませんでした。 そのため、鮮やかな紅葉を幣に見立ててささげます。 神様の心のままにお受け取りください」
この句は百人一首に納められた歌で、作者は菅家です。 この菅家という人物は、学問の神様としてもあがめられる菅原道真のことです。 学者として名高い道真公のこの作品は、鮮やかな紅葉が燃える秋の山の情景が浮かんでくる趣のある歌ですね。
まにまにを英語で言うと
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まにまにを英語で表現すると、 「give oneself to ~」や、 「surrender oneself to」などが挙げられます。 give oneself to~は、物事に没頭する、身を任せるという表現の時に使います。 Surrender oneself toは、何か大きな存在に身を任せるという表現に使用します。
神々に心を通わせ身を任せるという表現は、「surrender myself to god」という表現となりますね。 このほか、まにまにの意味のひとつである流れに身を任せる、というのは直訳で「go with the flow」という言い方も出来ます。
flowには、水が流れるという意味があります。 転じて、その場の流れに身を委ねるという意味を表します。
日本らしさが詰まった言葉「まにま」
今回は趣のある「まにまに」という言葉をご紹介しました。 流れに身を任せることや、周りのものと共に変化していく様子を表すこの言葉は、協調性や日本らしい言葉とも言えますね。
しかし、大いなる存在や時の流れなどに身を任せることは世界に共通する意識ですから普遍的な魅力にあふれる言葉でもあります。
何かに身を任せるというのは、楽なようでいてとても勇気の必要な決断です。 大いなる存在に従ったり、環境や人に合わせたり足並みを揃えるというのは、主体性や自主性を重んじられる現代にこそ必要な概念かもしれません。
日本の長い歴史や文化を表すこの言葉の魅力を、心のまにまに伝えていきましょう。