漁師さんといえばつなぎやジャンパーなど作業着姿が目に浮かびますが、実は漁師さんにも特別な時だけ着る晴れ着があることをご存知でしたか?
めったにお目にかかれない漁師さんの「万祝」について紹介します。
万祝とは
万祝とは「まいわい」と読み、漁師たちが意外な大漁などがあったときに漁夫や知人、関係者を集めて開かれる宴会のことをいいます。万祝は房総で生まれたことが知られており、江戸の文化の影響を色濃く受け継いでいます。
また、その万祝(まいわい)の宴会時に漁業主が配布するお祝いの着物のことも万祝(まいわい)と呼びます。
藍色の生地の半纏に「大漁」の文字が施されているのが万祝です。さらに、鯛や鶴、亀の絵柄や大漁を意味する宝船の絵柄も染め上げてあります。 万祝は漁師の晴れ着としても知られている通り、お祝いの時のために作られてきた和服の一種です。
大漁の時だけに着る習慣があった万祝は、漁業の世界的な服飾文化の中ではかなり珍しいものとされています。今では民芸品としても人気の高いものとなっています。
万祝の歴史
ここでは万祝の歴史について紹介します。
万祝の歴史は古く、なんと江戸時代から漁師の間で広まったのが起源といわれています。当時の万祝は民俗衣装であり、江戸時代の房総半島の漁村が発祥の地といわれています。
その後全国に広く知れ渡り、太平洋側の漁村にも広まっていきました。最盛期は江戸時代を過ぎて明治から大正に入ったあたりだといわれています。これが絶えるように衰退していったのは、1960年代に入ってからのことです。
万祝の特徴
万祝は鮮やかに染め上げられた、その柄が特徴といえるでしょう。万祝の柄は、黒潮を表現しているということで藍色が基本色となっています。
大漁などの文字を染め抜いただけの地味なものもありますが、万祝の多くは鶴亀、宝船、鯛、まぐろなどの縁起が良いとされているものを鮮やかな染料を多彩に使用して描かれているのが特徴です。
中にはクジラをモチーフにしたダイナミックな柄の万祝もあります。その鮮やかな色使いは「漁民民芸の結晶」と評されることもあるようです。
万祝の生地には通常は木綿が使われていますが、絹が使われた万祝も稀に見られます。万祝の染色技法は特殊で、この染色技法は現在までに日本全国各地にその伝統が継承されています。
万祝の特徴的な技法が現在の民芸品などに活かされていることからも、伝統を重んじる心が感じられますね。