出典:写真AC
勤勉な人物の象徴として、今も多くの小学校に銅像が置かれている二宮金次郎。皆さんも馴染みが深いと思いますが、実は二宮金次郎像と高岡銅器には深い関わりがあります。
ある説によれば、鋳金師の岡崎雪聲(せっせい)が1910年に制作した二宮金次郎像を見た明治天皇が、柴を背負っている姿を気に入られたのがこの銅像が普及した始まりだと言われています。
そして金次郎像の需要が伸びると見た高岡の商人たちは、いち早く銅像の制作をはじめました。高岡銅器の一大部分を担う銅像制作もここから成長し始めたといっても過言ではありません。
二宮尊徳(金次郎)自身が提唱した報徳思想のブームも相まって、1931年頃には高岡に金次郎像の注文が殺到していたそうです。1936年頃をピークとして、二宮金次郎像は全国の小学校に次々と建立されました。この波にうまく乗った高岡の鋳物業界は、二宮金次郎像のおかげで当時の不振を払うことができたそうです。
こうして、高岡は「銅像の町」としてのスタートを切ることができました。二宮金次郎像によって、高岡の銅像産業は大きな転換期を迎えることとなったのです。
高岡銅器職人の技術「錫紙」
錫紙とは、純度100%の錫で作られた、曲げて使えるお皿のことです。2018年現在、メディアでも多く取り上げられ、結婚式の引き出物や特別な日の贈り物に最適だと話題になっています。錫紙は曲げたり伸ばしたりしても劣化しにくく、繰り返し使うことができます。
その秘密は、高岡銅器職人の高い製造技術にあります。通常の錫板を加工する場合と違い、何回も圧延を繰り返した上で、高岡銅器職人が金槌でリズミカルに叩くことで錫の金属層が幾重にも折り重なり、曲げ伸ばしによる金属疲労を小さく抑えることができます。
この金属を叩く作業を通してできた槌目は、いわば錫紙の模様のようなもので、意匠的にも錫紙に趣を加えています。
さらに通常、錫を食器として使う際は、錫にアンチモンを加えたピューターという合金を使用しますが、錫紙は100%錫でできているので、錫本来の柔らかな質感を残しています。まさに、高岡銅器職人の手によってできた特別な食器なのです。
このように伝統とモダンを兼ね備えた錫紙は、幅広い層に喜ばれる贈り物として人気が高まってきています。
高岡でおすすめのお土産屋
ここまで高岡銅器について解説してきましたが、ここで高岡に訪れた際にぜひ足を運んでほしいお土産屋さんを紹介します。
高岡駅からつづく道を金屋本町の交差点で曲がると、ひっそりとした通りには千本格子の外観を持つ長屋が連なっています。
そんな長屋のうちの一つが「大寺幸八郎商店」です。この長屋の中心にある日本庭園の趣が感じられるよう設置されたカフェ・ギャラリーが、四季の移ろいと高岡銅器の長い歴史を感じさせてくれます。
店内ではスタイリッシュな干支やお雛様の銅像、花器などを販売しており高岡銅器を思う存分楽しめるお店になっています。オリジナルの錫アクセサリーが作れる体験コーナーもありますので、高岡を訪れた際にはぜひ覗いてみてくださいね。
4000年もの間受け入れられてきた「高岡銅器」
紹介してきたように、400年の歴史を持つ高岡銅器は時代ごとに形を変え、その時代の人々に広く受け入れられてきました。
受け継いできた伝統を絶やすことなく、なおかつ新しい形に挑戦し続ける高岡銅器は、これからも私たちの文化に彩りを添え続けてくれることでしょう。是非一度、古い歴史と伝統を持った高岡銅器を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。