宿場町とは
宿場町は朝廷からの号令を各地に伝令する早馬の乗り継ぎ所として生まれました。
大化の改新で発令された天皇令や、その後に制定された大宝律令などに記述があることから今から約1,350年以上前から存在したと考えられます。
現存する宿場町は江戸時代に入り、江戸を基点とした東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五つを指した五街道制度が整備され、参勤交代が始まると、江戸へ向かう又は領地に戻る各地の大名達の大名行列の宿場として賑わいます。
時代の移り変わりとともに商業が活性化すると、主に物流の中継地や搬送中の休憩や宿泊地として、主に寺院参拝を目的とした旅行の宿泊地として多く旅人が利用しました。
一般的な宿場町には大名や公家などが宿泊する本陣、身分の高い侍や公家が宿泊する脇本陣、一般客向けの旅籠や木賃宿などの宿泊施設、商店や茶屋などの施設のほか、早馬の乗り継ぎや荷物を運ぶ人足の手配を行う問屋場や、お触れ書きが掲示される高札場などが置かれました。
おすすめの宿場町①
奈良井宿
奈良井宿は中山道に存在する中仙道木曽路十一宿の1つで、現在は長野県市塩尻市に位置します。
奈良井川沿いに続く町並みは約1キロにも及び、宿場町としては日本最長を誇ります。
かつては木曽路の難所と言われた鳥居峠を、苦労しながら越してきた人やこれから峠に向かう人など、多くの旅人で賑わった宿場町です。1968年から保存活動が本格化し、1978年には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
江戸時代を偲ばせる残旅籠の軒灯や千本格子などが良好な状態で今に伝えられ、訪れる観光客の目を楽しませてくれています。毎年6月の第一金曜日から日曜日には「奈良井宿場祭」が催されます。
最終日の日曜日には、かつて徳川家へ献上されるお茶が、京都宇治から江戸に向かって中山道を行列したものを再現する「お茶壷道中」が行われ、多くの見物客で賑わいます。
奈良井宿には当時の面影を色濃く残しながら営業している、旅館や民宿などの宿泊施設もあり、江戸情緒を楽しみながら宿泊することができる宿場町です。
おすすめの宿場町②
妻籠宿
出典:妻籠観光協会 観光案内所
妻籠(つまご)宿は江戸と京を結ぶ中仙道69宿の中で江戸から42番目の宿場町で、現在の長野県木曽郡南木曽町に位置します。
木曽谷の細長い山峡の険しい渓谷に僅かにある、わずかな丘に妻籠宿はあります。妻籠の名前の由来は、木曽氏の一族である妻籠氏がこの地を治めたことからきていると伝えられています。
1968年に保存活動が始まり、1976年に宿場町として日本初の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。
木曽谷の大自然が創り出すダイナミックな風景は見応えのあるものですが、妻籠宿では4月中旬のなぎそミツバツツジ祭り、5月上旬の妻籠花祭り、7月下旬の和智埜神社祭礼、8月第4土曜日の妻籠宿火まつり、11月下旬には文化文政風俗絵巻之行列など多くのお祭りが催されます。
5~7月にはカジカガエル観察、6~7月ホタル観賞が行えるのも自然豊かな木曽谷ならではと言えるでしょう。妻籠宿では、江戸時代の雰囲気を色濃く残した旅館や民宿が11件営業し、現在でも宿場町の機能を残しています。
おすすめの宿場町③
馬篭宿
出典:写真AC
馬篭(まごめ)宿は全長約530キロを有する中山道の木曽路に存在する宿場町で、現在の岐阜県中津川市に位置します。
江戸から京に向かう場合の木曽路十一宿、最初の宿場町で山の尾根に沿った急斜面に作られ、街道を挟むように築かれた石垣の上に屋敷を造る独特の町の景観が特徴的な「坂のある宿場町」です。
1972年に町並みの保存委員会が発足し、街道に建てられていた電柱や電線を見えない場所に移設するなど、住民達の力で歴史が守られている宿場町です。
鎌倉幕府を開いた源頼朝によって、討たれた木曽義仲の妹、菊姫が義仲亡き後「美濃国遠山の荘の一村」で生涯を過ごしたと伝えられていますが、その村には菊姫が建立したと言われる尼寺が今も残る馬篭であったのではないかと考えられています。
馬篭宿には菊姫ゆかりの品が多く残されているほか、松尾芭蕉、山口誓子、正岡子規らの句碑、島崎藤村の碑などが多く、多くの文化人から愛された宿場町であることが伝わってきます。
日帰り温泉施設やふれあい牧場なども町の近くに存在し、宿場町の滞在以外も楽しめます。雰囲気のある石畳の馬篭宿には現在8軒の旅館や民宿が営業しているので、坂のある宿場町での宿泊を堪能することができます。
おすすめの宿場町④
海野宿
出典:写真AC
海野(うんの)宿は中山道と北陸道を結ぶ北国街道に存在する宿場町で、現在の長野県東御市に位置します。
北国街道は、佐渡で採れた金の輸送や加賀百万石に代表される北陸大名の参勤交代、江戸時代に盛んになった善光寺への参詣客が使用する、重要な街道でした。
最盛期には伝馬屋敷59軒、旅籠23軒があったと伝えられる、非常に賑わった宿場町と言えるでしょう。明治維新以降、各地の宿場町が廃れていく中で、海野宿は養蚕の村に姿を変えますが、多くの歴史的現像物が残されていることで、1986年に日本の道100選に選ばれ、1987年には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。
毎年11月下旬に催される海野宿ふれあいまつりは、多くの観光客で賑わうお祭りです。海野宿の宿に滞在して、ゆっくりと歴史と触れ合うのも素敵な時間ですね。