張り子の虎を飾る時期
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端午の節句に、張り子の虎を飾る風習は、特に関西地方に多く見られます。
元々虎というのは神の使いとされている動物だったため、虎の骨を薬として使ったり、魔除けや厄除けとして重宝されたりしていたのです。端午の節句は男子の健やかな成長を願う節句なので、子供の健康のために、張り子の虎が持ち出されるようになったのです。
このように見てみると、張り子の虎には、「人をバカにすること」と「魔除けや成長祈願として使われる縁起物」の2つの意味があって、面白いですね。
張り子の虎とお祭り
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大阪の道修町は、大手の製薬会社が本社を構えている場所で、「薬の町」として発展を遂げてきました。
そんな背景もあって、毎年開催されているのが、「神農祭」です。毎年全国から多くの観光客が足を運んでいるお祭りなのですが、そこで注目を浴びているのが張り子の虎です。
この祭りで導入されている張り子の虎は、緑の「五葉笹」がついていて、「黄色い虎」になっているのが特徴です。
この黄色い張り子の虎は「無病息災」を願って並べられています。一体、なぜそのような意味が込められているのか。これについては、文政5年(1822)にまで遡らなければなりません。
その当時大阪では「コレラ」という病気が代流行していて、「3日も経てば亡くなってしまう」とまで言われていました。その時に、道修町の薬種商が、トラの骨を削って、10種類の和漢薬と混ぜた薬を開発しました。それが、「虎頭殺鬼雄黄圓(ことうさっきうおうえん)」という丸薬です。
その薬の開発と同時に張り子の虎も作って、患者に薬を投薬したところ、病状回復に効果があったと言われています。
その薬は明治初年に設定された「売薬規制」により販売中止されてしまったのですが、張り子の虎の魔除けの効果はその後も引き継がれて、神農祭で導入されるようになったのです。
張り子の虎から学べること
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ここまでことわざとしての張り子の虎と伝統工芸品としての張り子の虎について見てきましたが、いかがでしたか?
張り子の虎には、中身が伴わないとして人を揶揄することわざとしての意味と、魔除けや成長を願う縁起物としての2つの意味があるということがわかったのではないでしょうか。
前者の意味での張り子の虎は、外面を整えて自信ありげにふるまうことだけでなく、中身を充実させることも重要だということを伝えることわざです。
「あいつは外見だけ良くて、中身が伴っていない張り子の虎だ」というように言われないように、自分の中身を充実させていきたいものですね。