「張り子の虎」の意味と使い方|類語・対義語もチェック!

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【読み方】 はりこのとら
【意味】 首を縦に振る癖のある人を揶揄するのに使われる。転じて、外見だけで中身が伴わないこと。
【類義語】 「見かけ倒し」「張りぼて」「羊頭狗肉(ようとうくにく)」「羊質虎皮」
【対義語】 「文質彬彬(ぶんしつひんぴん)」
【例文】 彼みたいな張り子の虎を部長に任命するのは間違いだ。

2つの顔を持つ張り子の虎


出典:写真AC

「彼みたいな張り子の虎を部長に任命するのは間違いだ」というような使い方をされる「張り子の虎」ということわざをご存知でしょうか。

張り子というと張り子の犬を想像される方が多いかもしれませんが、実は「張り子の虎」という言葉にはことわざとしての使い方もあるんです。あまり頻繁に使う言葉ではありませんが、その類義語にはみなさんがよく知っている言葉もあります。

また、伝統工芸品としての張り子は日本独自の技術と思われがちですが、実際は全く違うところが発祥だということをご存知でしたか?

張り子という造形技法には、実はあまり知られていない歴史や風習などがたくさんあるんです。

この記事では、ことわざとしての「張り子の虎」の意味や例文、類義語、伝統工芸としての「張り子」について見ていきます。

世界の伝統工芸技法「張り子」とは?


出典:写真AC

「張り子」とは木や竹を使って骨組みを作って、粘土や紙を貼り付けて人形のようなものを作る造形技法のことです。しっかりとした見た目の割に、中は空洞になっているのが特徴です。したがって、見た目に反してそれほど重くない作品も多くあります。

張り子は日本特有の技法と思われていることも多いのですが、実際は2世紀に中国で始まったと言われていて、その後ヨーロッパやアジアに広まったとされる説が有力です。

現在でも、イタリアの祭りで使われている仮装用マスクは張り子の技術を用いて作られています。

張り子の文化が日本に入ってきたのは平安時代で、現在では日本全土に普及して「赤べこ」や「だるま」、「起き上がりこぼし」などは郷土土産として人気を博しています。

張り子の虎の意味


出典:写真AC

さてこの張り子のなかでも虎を模したものが、「張り子の虎」です。先ほど述べたように、この張り子の虎にはことわざとしての使い方があります。

張り子の虎は「人の言うことにただ頷いているだけの人」、「実際は能力がないのに虚勢を張る人」、「首を振る癖がある人」といった意味を指します。

張り子の虎は首がうなずくように縦に稼働する仕組みがあることから、このような意味になりました。いずれにしろ、人をあざける意味で使われることがほとんどです。

見た目のかわいらしさや縁起物としての性質とは裏腹に、あまり縁起の良い意味合いではないのです。

張り子の虎の使い方


出典:写真AC

それではこの張り子の虎ということわざ、日常会話ではどのように使ったらよいのでしょうか?以下に紹介していきます。

「彼女は所詮張り子の虎だから、相手にしないほうがいい。」

張り子の虎みたいな上司を持ってしまったおかげで、胃痛が絶えない。」

「新しいアルバイトを雇ったが、張り子の虎だったようで、まったく使えない。」

など、どれも良い意味ではありませんね。あまり迂闊(うかつ)に使ってしまうと、あらぬ誤解を招いてしまいかねない言葉なので、慎重に使うようにしましょう。

張り子の虎の類語・対義語


出典:写真AC

ことわざとしての張り子の虎の類語は、見かけ倒し、張りぼて、羊頭狗肉、羊質虎皮など、いずれも外見ばかりで中身が伴わないさまを表す語です。

上のうち、見かけ倒しは比較的よく使う言葉ではないでしょうか。また張りぼてというのは要するに張り子で作ったもののことで、ざるやかごに紙を貼り、漆などを塗りつけたものを指します。

類語のうち後半2つは高校のころの国語の問題くらいでしか見たことがないという方も多いかもしれませんね。「羊頭狗肉」は「羊の頭を懸けて犬の肉を売る」ことから転じて、「見かけだけ立派なものを使って粗悪な実物をごまかす」という意味です。

また、「羊質虎皮」は「実際は羊なのに虎の皮をかぶっている」、つまり「外見に反して中身が伴わない」ということを指します。

対義語としては、強いて挙げるとすれば「文質彬彬」という四字熟語があります。これは外見の美しさと内面の素朴さがちょうど調和し合っていることを指します。外見・内実ともにずれがないということですね。

張り子の虎は日本のものではなかった?

さて、ここまでことわざとしての張り子の虎について見てきましたが、ここからは伝統工芸品としての張り子の虎について見ていきましょう。
張り子は海外から輸入された文化ですが、今ではすっかり日本の文化になりつつあります。代表的に名前があがるのは香川県です。

張り子の虎は、香川県の伝統的工芸品に指定されていて、日本全国から注目を集めています。現在は香川県の三豊市に張り子の虎の技法を引き継いだ3名の伝統工芸士がいて、張り子の虎を作成しています。

ちなみに、この伝統工芸士が作った張り子の虎だけが、香川県の伝統工芸品に指定されています。そのため、香川県の張り子の虎を手に入れるのは、一種のステータスとされているのです。

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